輝く水平線

【指導】1　★ ページ30

★羽生サイド

仙台へ向かう飛行機の中、俺は猛烈な眠気に襲われていた。
なぜなら昨夜、軽い気持ちで見始めたアニメ、銀盤のアスカを、ほぼ徹夜で一気見してしまったからだ。

「まさか主人公が最後にコーチと結婚して、夫婦でオリンピック目指すなんて…。」

シートにもたれ、寝落ちしそうになるのを必死に耐える。
Aさんが言っていた意外な結末ってこれか。
ずっとコーチに片想いしてたアスカが、全日本優勝と同時に告白したのはびっくりした。

恋愛に縁のない俺でさえ、二人を応援してしまったくらいだ。
やっぱコーチと生徒って二人三脚だよな。ずっと一緒にいたから、気持ちだって理解しあってる。

しかも中盤、アスカがトリプルアクセルをマスターした時なんて、マジで泣いてしまった。

あの、跳べそうで跳べない日々のつらさは痛いほどわかる。
みんなの応援で着氷した瞬間、自分のことのように嬉しかった。

来季は４回転を目指します！って。その過程がものすごく見たい。
オリンピックまでの険しい道のりを、夫婦でどう乗り越えてゆくのか、気になって仕方がない。

なんであんなに頑張り屋なんだ、アスカは…。根性ありすぎる。
スケートしている全選手に見て欲しいアニメだ。

これから奈々美先生と例の女の子のレッスンなのだが、銀盤のアスカがとても役に立つ気さえする。

…そう言えば、続編がどうのってAさん言ってたな。
それっていつから始まるんだろう。

ちょっと携帯で調べてみようとしたら、飛行機のアナウンスが到着の合図を告げた。
さすが、国内の移動は断然飛行機が早い。

窓の外には東北の海と水平線。
見慣れた景色なのだけど、なぜかいつもより心がなごんだ。





リンクに着いたら、奈々美先生も生徒の女の子も先に来ていて、自分が最後だった。

「ゆづ、ごめんね。忙しいのに。」

「いえ。大丈夫です。真奈美さん、今日は宜しくね。」

「宜しくお願いします。」

真奈美さんとは以前ここへきた時に会ったきりだ。
２２才だと言っていたけど、見た目はもう少し大人っぽくて、Aさんとは逆のタイプか。

今日は一応貸し切りではなく、他の生徒もちらほらいる中でのレッスンになるのだが、やはり俺がいるとリンクが浮き立つようで、さっきから視線が痛い。

時折、真奈美いいなー。と声が聞こえるけど、とりあえずこっちに集中する。

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