赤と黒のLiberations16

【８時２分】3　☆ ページ8

☆主人公サイド

だんだん頭が冴えてきて、まだベッドに寝転んだままの自分のお腹が小さくなったことを実感する。
一度に二人の親になるなんて想像もしていなかったけど、新しい家族の誕生は何ものにも代えがたいくらい嬉しい。

男の子が二人か…。
賑やかになるだろうな。このまま元気に育ってくれればと思う。

「羽生さんお疲れさま。痛かったでしょ、よく休んでね。」

「はい。」

先生の処置も終わり、かなり時間が経ったようで、ようやく新しい入院用の服を着せてもらった私。
まだ麻酔が効いているのでお腹の痛みはない。

「双子ちゃんたちは小さいから、しばらくはこちらでお世話しますね。」

ゆっくり休んでくたさい。と看護師さんから言われ、ほっとする反面、寂しく思う。

普通に生んでたら、今日から自分でお世話出来たのかな…。まぁ身体の自由がきかないから仕方がないけど。

「ではお部屋に移動しましょう。」

「はい。」

車椅子を用意してくれたので、手伝ってもらいながら座る。
そして部屋へ戻る途中、廊下の窓から青空が見えた。

いい天気だな…。
それにまだ午前中だから少しも眠くない。
せっかくなのでこれから部屋で結弦くんと色々相談して…。あ、でも手続きはお母さんにやってもらった方がいいかも。

「ゆづ…いえ、ご主人って家庭的で愛妻家なんですね〜。」

事務的なことを考えていると、不意に看護師さんが嬉しそうに話しかけてきた。

「えっ、そうですか？」

愛妻家…。いや、結弦くんの中心は常にファンとスケートだ。
来週からコンティニューだし、もう頭の中はショーに切り替わっているだろう。今日は赤ちゃんが生まれたから特別なだけ…だと思う。

「引退してすぐに結婚したときはひっくり返りそうになりましたけど、ご本人が幸せそうでこちらもなんだか幸せです。」

「……。」

幸せ…。ひよっとしてこの看護師さんファンなのかな…。
いつだったか、自分の幸せを願ってくれる人は皆大切だって、結弦くんが言ってたっけ。

ありがたいなぁ…。その気持ちを返すためにも、結弦くんには一生ファンを一番に考えて欲しいな。

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