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【8時2分】2 ★ ページ7

「あー、きゃー!」

「落ち着いてくださいね。」

それでも、初めての抱っこは俺を軽いパニックにさせるには充分だ。

四苦八苦しながらも、なんとか形になり、我が子の顔を覗く。

「小さい…。」

こんな感想しか言えないほど、今胸が一杯だ。

「双子としては2300グラムが平均なので。しっかりしてますよ。」

そうなんだ…。
よく見るとAに似てるかな。てことは性格は俺…いや、そんなのまだ分かんねぇって。

「この子たち二卵性ね。」

不意に処置中の先生が呟いた。

「といいますと?」

「兄弟がいっぺんに生まれた感じですね。一卵性双生児は全く同じ遺伝子ですが、二卵性は半分くらいです。」

「そうなんですね…。」

なるほど。ということは別人格か。

「はーい、この子もきれいになりましたよ。」

後で生まれた子もまた、色違いのおくるみでやって来た。
俺は一人目の抱っこで手がふさがっているので、横たわっているAの隣に寝かされる。

「赤ちゃん二人とも見たい…。」

Aが首を持ち上げて覗き込もうとしているので、よく見えるように少しかたむけてあげる。

「どう?」

「かわいい…。」

「パパに抱っこされてる方がお兄ちゃんですよ。」

医学的には先に取り出した方が長男らしい。
それに見比べると微妙に顔が違うような気がする。

「すごい…。」

「そうだね。Aはすごいよ。」

「そういう意味で言ったんじゃないよ。」

「謙遜すんなよ。」

男の俺には地球がひっくり返ったって出来ないことを、Aはやってのけたのだ。
Aだけでなく、世の中のお母さんたちを本当に尊敬する。

「ママの処置がもう少しかかるので、ここで一旦ご主人と赤ちゃんたちはあちらへ行きましょう。」

え、もう?と思ったけど、これから少し検査があるらしい。
Aも緊張から解放されて疲れているだろうし、自分も各方面に連絡したりしなきゃいけないんだった。

すやすやと眠る兄を一旦看護師さんに渡して、Aの側にいる弟とAに顔を寄せる。

「じゃあA、後でね。」

「うん…。」

さっきまでの不安な表情はすでになく穏やかだ。
それをしっかりと見届けてから、その場を離れた。






.

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鹿(プロフ) - みなみさん» ありがとうございました。妖怪なんて知識ないので、ネットに頼りっぱなしで…。地震のとき、真っ先に羽生さんを心配してしまいますね。どうか無事で! (2021年2月14日 20時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
みなみ - ついに完結ですね。面白かったですよ。妖怪が絡むお話なんてなかなかないと思いますし。  大きめの地震がありました。うちもけっこう揺れましたけど、仙台はもっと強い揺れだったようで、羽生くんが心配。とにかく、みんなが無事でありますように。 (2021年2月13日 23時) (レス) id: 42f93678ff (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - 〜空〜さん» 完結がモットー(*^^*)みなさんに楽しんでもらえたかなー。自分でも作品を読み返すのですが、最初は書きやすいのですが、だんだんネタが尽きてくるパターンが多いです(笑)くっつくまでが楽しいんですよねー。また読みに来てくださいね! (2021年2月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - キャラメル味さん» 最後結構ばたばたと終わらせてしまいましたが楽しんでもらえてよかったです(*^^*)やっぱり羽生さんには女の子だよなーと、妄想してしまいました。兄をサポートするしっかり者の弟。というイメージですかね。 (2021年2月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - 璃子さん» ご愛読ありがとうございました(*^^*)今回双子にしたのですが、成長するとどっちがしゃべってるのか分からなくなりそうで難しいかも。結局新しいお話を書いてしまい、またしんどくて楽しい生活が始まってしまった…。 (2021年2月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鹿 | 作成日時:2020年12月16日 18時

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