【御守り】13 ★ ページ35
「妖怪は成長しないからずっと同じ姿。でもそれも悲しいね。なんだか切なくなっちゃった。」
ひとみくんの去って行った方を見つめつつ、すんと鼻をすする。
この世に生けるものとそうでないものの差を、自分の人生と重ねてみているのだろうか。
子供から大人になって、俺と結婚して子供を授かり親になったA。
年を重ねる時の流れを、妖怪たちは感じることが出来ないのだ。
魂も肉体も永遠に失くならないなんてこと、普通ならあり得ないのだから。
「あーう。」
そんな切な気なAを慰めるように、翼があくびするように口を開けた。
「どうしたの?翼くん。」
「んまー。」
まるで何かを訴えているように、赤ちゃん独特の声を出す。
「ママ泣かないでって言ってるんじゃない?」
「まさかぁ。…でもありがとうね。」
慈しむように、すりすりと頬擦りするA。
すると冷たかったのか、さっと片手でカーテンを閉め、部屋の中へと移動したので、自分も後に続く。
そして翔の側で膝まずき、穏やかな寝顔と対面する。
「こっちはよく寝てんな。」
「寝る子は育つ。」
「だな。」
すでにすやすやと眠っている翔を起こさないように、Aが翼を隣に寝かせる。
このままおとなしく寝てくれるかと思いきや…。
「ほわ…。」
不意に翼の顔が歪んだ。
「あ、泣く。これは抱っこだ。」
まだ親の暖かい腕が恋しいんだろう。ここは俺の出番だとばかりに、横からさっと手を出し、今度は自分が翼を抱っこする。
「そんなに抱っこばかりしてたら、今夜は腕がちぎれるよ?」
「大丈夫。Aとは鍛え方が違うし。よしよし、良い子だね。」
立ち上がり、背中の辺りをとんとんとしながら揺らしてあげると、機嫌が直ったのか、にこっと笑った。
「かわええ〜。」
その表情に、すっかり頬がゆるんでしまう。
「幸せそうな顔しちゃってさ。」
「だってまじで天使。」
このちっちゃなお手ても何もかも、目に入れても痛くない。
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鹿(プロフ) - みなみさん» ありがとうございました。妖怪なんて知識ないので、ネットに頼りっぱなしで…。地震のとき、真っ先に羽生さんを心配してしまいますね。どうか無事で! (2021年2月14日 20時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
みなみ - ついに完結ですね。面白かったですよ。妖怪が絡むお話なんてなかなかないと思いますし。 大きめの地震がありました。うちもけっこう揺れましたけど、仙台はもっと強い揺れだったようで、羽生くんが心配。とにかく、みんなが無事でありますように。 (2021年2月13日 23時) (レス) id: 42f93678ff (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - 〜空〜さん» 完結がモットー(*^^*)みなさんに楽しんでもらえたかなー。自分でも作品を読み返すのですが、最初は書きやすいのですが、だんだんネタが尽きてくるパターンが多いです(笑)くっつくまでが楽しいんですよねー。また読みに来てくださいね! (2021年2月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - キャラメル味さん» 最後結構ばたばたと終わらせてしまいましたが楽しんでもらえてよかったです(*^^*)やっぱり羽生さんには女の子だよなーと、妄想してしまいました。兄をサポートするしっかり者の弟。というイメージですかね。 (2021年2月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - 璃子さん» ご愛読ありがとうございました(*^^*)今回双子にしたのですが、成長するとどっちがしゃべってるのか分からなくなりそうで難しいかも。結局新しいお話を書いてしまい、またしんどくて楽しい生活が始まってしまった…。 (2021年2月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鹿 | 作成日時:2020年12月16日 18時