赤と黒のLiberations11

【夏の再会】9　★ ページ9

★羽生サイド

最後の花火が打ち上がったのか、辺りが突然静かになってしまった。
ということは、この幸せでちょっとどきどきした初めてのデートも、これで終わりということだ。

二人で過ごした夏祭りは、今まで捨ててきた幸せがいっぺんに返ってきたような、本当に楽しい時間だった。

「さ、帰ろっか。」

ずっとこの余韻に浸っていたいけど、いつまでもここにいる訳にはいかない。
名残惜しいけど、今日はここでおしまい。

「うん。お面、忘れないでね。」

「オッケー。」

この日のためにAが用意してくれた狐のお面。
正直最初は抵抗あったけど、お陰で色々助かった。

どこに置いたっけなーと、暗闇の中、手探りで橋の欄干に手を伸ばすと…。

「あっ！」

なんと手がお面に当たって、そのまま川へぽちゃんと落ちてしまった。

「落ちたの？」

「うん…ごめん！」

顔の前で手を合わせて謝る。
失敗した…。こうなればもう拾いに行くわけにもいかない。

「仕方ないよ。また来年買えばいいし。それよりこれから帰宅する人がこの橋を通るから、私たちも早く帰ろ。」

「あ、そうなんだ。」

「暗いから誰も羽生くんだって気付かないと思うけどね。」

そっか。…とはいえ、至近距離でガン見されたらしらの切りようがない。ここはAの言う通り、まだ人がまばらなうちに帰った方がよさそうだ。

「あーでも楽しかったぁ。」

「私も。夜のお出掛けならこれからもできそうだね。」

それは顔バレしにくいということか、それとも妖怪を視る確率が減るという意味か。
でも来年はお面なしで来ようかなと、密かに思っていた。





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