検索窓
今日:5 hit、昨日:26 hit、合計:55,978 hit

【氷と雪】14 ★ ページ41

「どうしたの。」

「え?別になんでもないよ。帰って何食べようかなって考えてただけ。」

「ひょっとして買い置きなかった?」

「ううん。ラーメンくらいならあるから。」

それでいい。と青信号の交差点へ進入し、右折レーンに入る。
この先は高速道路の入り口で、乗ってしまえば30分ほどで神社へ着くのだが…。

「……。」

その淡々とした口調に違和感を感じた俺は、なんとなくさっきAが雪女と交わしたやり取りを頭の中から引っ張り出す。

確か新婚生活に不満があるような発言が多かったような…。
結局今日のオフも、有意義に過ごせたかと言われるとちょっと違う。

スケートデートはできなかったから、Aはただ送り迎えの運転手になっただけ。
そんな奥さんに、俺は労いの言葉すらかけてない。

「お腹すいたなぁ〜…。」

ふと聞こえたセリフに、自分の食べ物に対する感覚が世間一般とずれていることを思い出す。

Aは俺みたいに少食じゃないし、体重を気にせずにいろんなものが食べたいはず。
アスリートよがりな食生活を押し付けるなんて、迷惑もいいとこだ。

「A、やっぱ今日は外でランチしよっか。」

「えっ。」

そう伝えると、運転中だというのに一瞬驚いた顔でガン見されてしまった。

「危ないから前見てて。」

「わわっ!…え、でも大丈夫?」

「大丈夫。それに、今日は送ってくれてありがとね。」

心配されてしまったので、落ち着いた口調で即答する。
根拠のない自信は得意だ。

「それはいいけど…えと、どこ行く?」

「Aが行きたいとこでいいよ。そのあと買い物しよ。今日は一日付き合うから。」

もうこの際、ランチとお買い物デートに変更だ。

「それなら私、お米が買いたかったの!」

「そうなの?」

あ、重い物は女の子にはつらいのか。
こんなことにも気付かなかった自分が情けない。

「羽生くんの靴下も買いたいし…。」

「なら大型ショッピングセンターだな。」

行ったことないけど、確か泉大沢辺りにあったはず。

「じゃあご飯もそこのレストランでいいかな。」

「うん。」

Aの声のトーンが上がった。
嬉しそうな妻を見ていると、こういう些細な経験も大事なんだなと思う。

これから、そんな普通の努力もしなきゃな。
もう自分一人だけの人生じゃないんだと、改めて思った。






.

【一人】1 ☆→←【氷と雪】13 ★



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (63 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
99人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

鹿(プロフ) - るりさん» そうなんです。くっついてしまうとなかなかハラハラドキドキがなくてお話がまったりしてしまうんです。果たしてどちらの方がいいのか悩むところですが…。^^;桃色は、どうやってそっち方向に繋げるか…難しいですね(笑) (2020年4月26日 9時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
るり(プロフ) - コロナで日常の有り難みを感じてます。元気でいるといいなぁ。何気ない新婚生活いいですね^ ^妄想万歳!桃色の方もまた読みたいです^ ^元気にしてるといいですね、、、!!移行楽しみです。 (2020年4月25日 15時) (レス) id: 6fac0f416c (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - みなみさん» ロス期ですね^^;妄想するしかないので、してますけど、面白く書けてるか心配。。。新しく書くほどネタもないので、どうしようかな〜 (2020年4月22日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
みなみ - こんな時は散髪にも出掛けたくないんじゃないかな?と思うので、久しぶりにお母様が切ったかもと、勝手に思っています。報道ステーションのはだいぶカットされていたから、改めて動画見ました。ZEROでも見られたけど、録画しそびれました。 (2020年4月18日 15時) (レス) id: 42f93678ff (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - みなみさん» いつも、髪は誰が切っているのかなと思ってますが、もうお母さんではなさそうな…。買い物とか大丈夫かなあ〜。心配はつきませんね^^;しかしニュースが羽生さんばかりでもう、スターやなって思いました! (2020年4月18日 9時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:鹿 | 作成日時:2020年3月21日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。