【氷と雪】12 ★ ページ39
「そ、それだけは何とぞ〜!」
「だったら羽生くんに近付かないで。さっきはあり得ないって思ったけど、氷の上はあなたのテリトリーだもんね。」
さすがに本気で空調は切らないだろうけど、ここで雪女に大きな顔をされたら困るので、俺も何も言わずに傍観する。
「や、あのっ、私はただゆづくんと仲良くなりたいだけで…。」
「だったらちゃんと仕事して。羽生くんをおかしな妖怪や霊から守るのが、雪女さんがここでできる唯一のことでしょ。」
Aがとどめを刺すように言い切った。
…なんか側で聞いてると、気のせいか俺に似てきたような気がする。元々B型だし、論破するのは得意なのかも。
やべ、東京の仕事ばっかりして怒らせないように気をつけよう。
「がんばります…。」
「羽生くんに姿を見てもらえるようになっただけでも感謝してね。」
「ありがとうございます…。」
「……。」
なんだろう。ここにきて雪女が敬語になった。
晴明感全開のAってけっこう怖いかも…。突然の雨降って地固まる的な展開に、俺の方がぽかーんとしてしまう。
「あの…奥さんはゆづくんのことを、羽生くんって呼ぶんですね。」
「うん。ずっとそうだったからなかなか抜けなくて。」
変な上下関係が出来上がってしまった。
「結弦くーん、時間だよ。」
「え…あっ!」
支配人さんの声かけに、慌てて時計に目をやる。
すると当然、長針も短針も12の位置にあって、練習時間が終わったことを示していた。
そう。俺の貴重なスケートタイムは、トリプルループを一本跳んだだけで終了してしまったのだ。
「久しぶりに思い切り滑れたかい?」
「えぇ…あはは。」
白々しい笑いでこの場をごまかす。
貸し切りのほとんどを雪女との雑談に費やしてたなんて言えねぇ。
「もう一般の営業が始まるから早くここから出た方がいいよ。」
「そうですよね。すぐ出まーす。」
営業の準備があるのだろう、支配人さんはすぐに行ってしまった。
三人いることには触れられなかったので、きっと雪女は見えてないんだろうな。…羨ましい限りだ。
「ゆづくん帰っちゃうの?」
「帰るよ。君のおかげで全然練習できんかったわ。」
時間を気にしつつ、乱暴に荷物を鞄に突っ込む。
そしてスケート靴を脱いでスニーカーに履き替えたら、二重に着重ねたジャージを脱ぐのだが…。
ほとんど汗をかいてないし、練習着だけどもうこのままの格好で裏から出よう。
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鹿(プロフ) - るりさん» そうなんです。くっついてしまうとなかなかハラハラドキドキがなくてお話がまったりしてしまうんです。果たしてどちらの方がいいのか悩むところですが…。^^;桃色は、どうやってそっち方向に繋げるか…難しいですね(笑) (2020年4月26日 9時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
るり(プロフ) - コロナで日常の有り難みを感じてます。元気でいるといいなぁ。何気ない新婚生活いいですね^ ^妄想万歳!桃色の方もまた読みたいです^ ^元気にしてるといいですね、、、!!移行楽しみです。 (2020年4月25日 15時) (レス) id: 6fac0f416c (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - みなみさん» ロス期ですね^^;妄想するしかないので、してますけど、面白く書けてるか心配。。。新しく書くほどネタもないので、どうしようかな〜 (2020年4月22日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
みなみ - こんな時は散髪にも出掛けたくないんじゃないかな?と思うので、久しぶりにお母様が切ったかもと、勝手に思っています。報道ステーションのはだいぶカットされていたから、改めて動画見ました。ZEROでも見られたけど、録画しそびれました。 (2020年4月18日 15時) (レス) id: 42f93678ff (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - みなみさん» いつも、髪は誰が切っているのかなと思ってますが、もうお母さんではなさそうな…。買い物とか大丈夫かなあ〜。心配はつきませんね^^;しかしニュースが羽生さんばかりでもう、スターやなって思いました! (2020年4月18日 9時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鹿 | 作成日時:2020年3月21日 20時