赤と黒のLiberations11

【氷と雪】10　★ ページ37

「でもどうして羽生くんにも妖怪である雪女さんが見えるのかな。」

ふとAが一人腕を組んで考え出した。
突然見えるようになるとかおかしいと言いたいようだけど、自分自身、以前ちょうちん小僧を見た時点で変だなって思ってた。
でも理由として考えられることはただ一つ。

「…Aと結婚したからじゃね？」

白狐のパーツでさえ消えたんだ。妖怪体質になったとしてもおかしくない。

「晴明の力ってすごいのねー。百歩譲ってそこは感謝するわ。」

雪女がAに向かって小さく拍手をすると、Aが頬を赤くした。

「そ、それほどでも…。」

「誉められていいに気になるな。」

自分たちにとって、雪女が厄介な存在であることには間違いないのに。

「でも嬉しいな〜。これからゆづくんがここへ来る度に会えるんだ。」

「なんかやだ。」

「えー、ひどい！」

いると思うだけで視線が気になって練習できんわ。

「つか国へ帰りな？スケートリンクに雪女が住みついてるとかおかしいし。」

普通はどこかの雪山だろう。

「でもミーハーな霊から羽生くんを守ってくれてるんだよ？そこは酌むべき所じゃない？」

「そうよそうよ！さすが晴明、良いこと言う！」

「お前…夫が他の女性に言い寄られてて平気なの。」

雪女とかの前に考えなきゃいけないことがあるだろう、とAをたしなめる。

「え…妖怪だし、さすがにそれは無いかなって思ってたけど…。」

「無いけど危機感くらい持てよ。」

こう見えて押しに弱いタイプなんだぞ俺は。

「ねぇお願い、帰れなんて言わないで。ゆづくんのために、このリンクが永遠に存続できるようにようにするから。」

「え？」

「過去に何度かそんな話が出たんだよね。でもそのたびに人間を情報操作してるの。」

「それまじかよ！」

確かに一度、いや二度このリンクは長期閉鎖されてる。
もう絶対そうならないために、自分も出来る限りのことはしているつもりなのだが、いつか大人の事情でやむを得ず…ということになる可能性もあるだろう。

自分の力で新しいリンクを作りたいなと考えたこともあるけど、一人でどうにか出来るものじゃない事はよく分かっている。

このリンクが失くなることは、東北のスケート界にとって大きな損失だ。

【氷と雪】11　★→←【氷と雪】9　★

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す