赤と黒のLiberations11

【門出】9　☆ ページ23

☆主人公サイド

さっきから撮影の合間に機会を伺っているのだけど、なかなか羽生くんと二人になれなくてやきもきする。

あぁ〜もう…早く耳やお髭が無くなったことを本人に伝えたいのに、みんなの前じゃさすがに言えないよ…。

そう、羽生くんが白狐化して三年目のこの夏。
ようやく九尾の忘れ形見である、白狐のパーツが消えたのだ。

私だけが見えなくなった訳じゃないだろうし…。とにかく一刻も早く確かめたくてたまらない。

「新婦さん、もっと笑顔でお願いしまーす。」

「げ。」

そわそわしすぎてあまりにしかめっ面をしていたのか、カメラマンの方に注意されてしまった。
恥ずかしい…。

「んもー何その、げって言葉。今日くらいおしとやかに出来ないの？ほら、笑って。」

案の定、羽生くんからもダメ出しをされ、親族から軽く笑いが漏れる。
さらに頬を両手で挟んでいじられ、こういうミスは絶対にスルーしないのが羽生結弦という人間だったなと再確認する。

「もう、お化粧が手に付くよ。」

「あ、いけね。あはは。」

羽生くんが軽く手を擦りあわせて白粉(おしろい)をはたく。
婚礼はただでさえ白塗りが濃いので、自分でもあまり触れないようにしていたのに。

でも今は撮影中だから、どうやっても狐耳の事は伝えられそうにないかな。仕方がないので、また隙を見つけて教えてあげよう。

元の姿に戻れたって知ったら、羽生くん喜ぶだろうなぁ…。
そうして何枚か家族で撮ったあと、カメラマンの方からナイスアシストが。

「じゃあ次、ご夫婦で撮りますね。」

「はーい。」

え、ご夫婦…？
羽生くんから元気な返事が聞こえると同時に、これはチャンスだと心の中でガッポーズする。

「このまま座って撮ります？」

「そうですね。」

カメラマンさんが余分な椅子を退けつつ羽生くんに打診すると、それにあっさりイエスで答えられ、この場所ではちょっと他の人と距離が近いのでまずいなと内心焦る。

狐耳の事は出来れば周りに聞かれたくないし、羽生くんだってどんな反応をするか想像もつかないから、むやみに伝えられない。

「ねぇ羽生くん。あっちの木陰で撮らない？」

「え？」

「違うシチュエーションの方がいいでしょ。むしろいいに決まってる。」

そう半ば強引に椅子から立たせると、反対する理由もないのか素直に移動してくれた。
良かった…。このままこそっと告げたいので、着物の裾を踏まないよう、くっついて腕を組む。

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