赤と黒のLiberations11

【門出】7　★ ページ21

★羽生サイド

これから指輪の交換だというのに、Aの様子が突然おかしくなった。

何か言いたげに口をぱくぱくさせたり、視線が俺の身体のあちこちに散らばって意味深だったり。

でもそれを今問いただせるわけもなく、まどかちゃんが指輪を持ってきた所で、自分たちは再び式へと集中するのだか…。

「それでは、指輪をご新郎さまからご新婦さまへお願いします。」

神主さんから促され、ひとまずAの挙動不審さを無視する。
そして指輪を手に取り、一生守ると心の中で固く決意しながらAの薬指へゆっくりとはめる。

もしこれが公開披露宴とかなら、ぱしゃぱしゃとたくさん写真を撮られそうだ。…絶対にしないけど。

そしてAからも同じく指輪をもらったら、列席している家族が拍手で祝ってくれた。
これでついに夫婦になったんだなと感無量になりつつ御神体へ一礼し、二人で玉串という榊の枝を奉納したら神前結婚式はおしまいだ。

神主さんのお言葉のあと、皆が順番に席を立ち、一番最後に退出する自分たちだけになったところで、不意にAに袖を引かれる。

「羽生くん…！」

「わっ、バカ。引っ張んなよ。」

国宝級の羽織だぞ。伸びたらどうする。

「ご、ごめん。でも羽生くんの…！」

そこまで言いかけて、不意に神主さんがとても穏やかな口調で話しかけてきた。

「今日はいいお式でしたね。私は人生でこんなに自分の職に誇りを持ったことはごさいません。」

「あ、はい。ありがとうございます。」

「これから皆さんで記念写真を撮りましょう。さぁ、境内に降りますので、付いて来てください。」

「はい。A、行こ。」

「……。」

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