赤と黒のLiberations11

【門出】5　☆ ページ19

お互いの両親に挨拶をした後、自分たちを先頭に式場である拝殿へ入ると、そこはもう私が知っているいつもの拝殿ではなかった。

左右に分かれて設けられた席や、真ん中に敷かれている絨毯のような赤い毛氈(もうせん)。
そんな様変わりしてた厳かな空間に、一歩入っただけで身が引き締まる想いだ。

これが全て自分たちのために用意されたものだということをしっかりと自覚し、これから頑張っていかねば！

今回の式はごくごく身内で行うので、人数は１０人ほどしかいないのだけど、それでもさっきの羽生くんみたいに緊張するのは変わらない。

そしていよいよ、親族だけになった拝殿で私たちの結婚式が行われる。

「これより、羽生結弦さま、花山Aさまの神前結婚式を執り行います。」

まず、最後に入場してきた神主さんが身のけがれを清めるため大麻を振り、祓詞を述べると、神様へ結婚のご報告を申し上げる奏上を行う。

本来ならばそれはお父さんの役目なのだけど、今日は他の神社から知り合いの神主さんをお呼びした。

お父さん、最初はすごくやりたそうにしてたけど、さすがに娘の結婚式は親族として参加するものだと、お母さんに怒られたんだっけ。

気持ちはわかるけど、結婚式くらい新婦の父らしく振る舞って欲しい。

…それにしてもうちの両親共々、羽生くんのご家族に受け入れられて本当に良かった。
お会いしたときは絶対に反対されると思っていたから、優しい方たちで安心した。

それに普通、日本一立派な息子の結婚式にはあれこれ口を出したいだろうに、ここで式を挙げることも二つ返事で了承していただけたし。

羽生くんが一度決めたら譲らないほど頑固なのは知ってるけど、そんな彼を育てたご両親こそ、尊敬に値するだろう。

とにかく、羽生くんをこの世に存在させてくれて感謝の気持ちでいっぱいだ。

「これより、三三九度の儀を執り行います。」

祝詞の後、神主さんの合図で巫女であるまどかが盃の乗った膳を運んでくる。
三三九度とは文字通り、三回に分けてお神酒をいただく儀式で、三という数字は天、地、人をあらわしているとも言われており、陰陽道に縁深い羽生くんならではだなと思うのだが…。

羽生くん、お酒にはめっぽう弱いのに大丈夫だろうか。
本人は昨日、頑張るって言ってたけど、飲んだ瞬間倒れるとかないよね。

【門出】6　☆→←【門出】4　☆

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す