【夏の再会】12 ★ ページ12
「ちょっと君…」
「羽生くんっ!」
ひとまず、一人で危ないよ?と言おうとしたら、不意にAが俺を制して言葉を遮った。
「なんだよ。」
「いいから黙って!」
怒鳴る風でもなく、あくまでも小声で注意される。
その意味が全く分からない俺は、もちろん納得できないのでAに言い返そうとする中、さらに腕を掴まれ、身体を引き寄せられた。
「あの子、ちょうちん小僧だよ…!」
「…へ?!」
そして耳元で言われた言葉に驚愕する。
ちょうちん小僧…あの子が…。
暗がりで揺れる灯りは、確かにそれっぽく見えなくもないけど、でもまさかこのタイミングで妖怪と会うなんて…。
「お姉ちゃーん、早くぅ。前みたいに、つまづいちゃうよ?」
手を振ってAを呼ぶちょうちん小僧は、確かに格好がもろ昔の日本だ。
着物に下駄に。まるであの時の座敷わらしの仲間のように見える。
しかも前みたいにってことは、つまりAと再会したことを向こうも認識してんだな。
「えっ、そうだっけー?」
「ここに、穴があったでしょ?…あれ?ない。」
少し離れた間隔で会話する二人に不安が募る。
相手は妖怪だし、いきなりキレて暴れたりしないだろうか…。
「道路がきれいになったんだよ。」
「えー、だれがうめたの?」
「誰って…。」
「この狐の、お兄ちゃん?」
「へ?!」
俺?
いきなり話に自分が登場して緊張が走る。
しかも狐だなんて…。この子にもばっちり正体が見えてるようだ。
「違う違う、お仕事の人だよ。」
「ふーん。」
びびった…。Aがさらっと答えてくれたけど、あまりに突然で何も言えなかったし、穴が塞がれてちょうちん小僧が怒りだすのかと思った。
尋ねた本人も、じゃあ先行って待ってるね。と言っただけで、特に気にしてはなさそうだけど…。
「ちょっとA…大丈夫なの?彼。」
心配で、ちょうちん小僧に聞こえないように呟く。
「こうやって、行く先をちょうちんで照らしてくれるだけの妖怪なんだけどね…。」
「怖ぇ…。」
「大丈夫。おとなしい子だから。」
それはAに対してだけじゃないのか…。
言葉選びは慎重にしようと心に誓った。
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鹿(プロフ) - るりさん» そうなんです。くっついてしまうとなかなかハラハラドキドキがなくてお話がまったりしてしまうんです。果たしてどちらの方がいいのか悩むところですが…。^^;桃色は、どうやってそっち方向に繋げるか…難しいですね(笑) (2020年4月26日 9時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
るり(プロフ) - コロナで日常の有り難みを感じてます。元気でいるといいなぁ。何気ない新婚生活いいですね^ ^妄想万歳!桃色の方もまた読みたいです^ ^元気にしてるといいですね、、、!!移行楽しみです。 (2020年4月25日 15時) (レス) id: 6fac0f416c (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - みなみさん» ロス期ですね^^;妄想するしかないので、してますけど、面白く書けてるか心配。。。新しく書くほどネタもないので、どうしようかな〜 (2020年4月22日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
みなみ - こんな時は散髪にも出掛けたくないんじゃないかな?と思うので、久しぶりにお母様が切ったかもと、勝手に思っています。報道ステーションのはだいぶカットされていたから、改めて動画見ました。ZEROでも見られたけど、録画しそびれました。 (2020年4月18日 15時) (レス) id: 42f93678ff (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - みなみさん» いつも、髪は誰が切っているのかなと思ってますが、もうお母さんではなさそうな…。買い物とか大丈夫かなあ〜。心配はつきませんね^^;しかしニュースが羽生さんばかりでもう、スターやなって思いました! (2020年4月18日 9時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鹿 | 作成日時:2020年3月21日 20時