赤と黒のLiberations9

【最低最悪】3　★ ページ43

★羽生サイド

心が泥のようだ。

夕べのAとの話し合いは、自分の思い描いていた結果とは程遠く、挙げ句の果てに、今は結婚しないとまで言われてしまった。

実際、所属先と連盟を通して出したコメントには、結婚についての言及は避けた。
交際をしている事実のみを公表するにとどまり、相手の名前も認めたのだか…。

ずっと。Aは俺との結婚を心待ちにしてくれてると思っていた。
なのに、突然コウくんのことを持ち出して…。

「俺にどうしろって言うんだよ…。」

念のため強化部長が用意してくれた部屋で一人うなだれる。

あの様子だと、まるでコウくんとなら問題なく後継ぎの件を解決できるとでも言いたげだった。

ただの幼なじみだって言ってたくせに、二年たつと印象が変わるのか？
何にせよ、ここへきて次男であるコウくんの好感度が上がってどうする！

「危険だ…。」

というか、最低最悪だ。
このタイミングで二人が近づくことに不安が募る。

どうにかAの気持ちを自分の方へ向けなきゃ。
幸いご両親は俺の味方だから、ここら辺を上手く利用して…。

いや、恋愛は本人の気持ちが一番大切なんだ。周りがとやかく言って進展することは何一つない。

「…やっぱもう行っちゃうか。」

Aの気持ちが揺らいでいる今、失恋したコウくんに先を越される可能性もある。

アイツは昔から卑怯な手を使って人を騙すのが上手いから、Aなんてコロッと騙されるぞ。

「よし。いったん帰郷だな。」

もう世間に恋人の存在はバレてるんだし、会いに行ったって不思議じゃない。
ただ待ち伏せとかされるとやっかいだから、実家には寄らずに直接神社へ行くことにして…。

「そうと決まれば善は急げだ。」

新幹線を使えばほんの数時間で仙台に着く。
幸い仕事は全て済んでいて、明日はオフだ。

珍しく無鉄砲な自分に、変な自信がわいた。





.

【最低最悪】4　☆→←【最低最悪】2　☆

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す