赤と黒のLiberations9

【揺れる気持ち】10　★ ページ36

「ごめんなさい、廊下じゃちょっと…。」

「かまわないですよ。どうぞ。」

とりあえず話を聞こうと、自分を先頭に中へ入ってもらう。
すると強化部長がすぐに口火を切った。

「羽生くん、落ち着いて聞いてね。あなたの記事が明日の週刊誌に載るの。」

「え。」

週刊誌という嫌なワードに、立ったまま振り向く。
載るって…。引退したからその絡みじゃないのかなと、平常心を装ったのだけど、続けて告げられた内容に背筋が凍る。

「お付き合いしてる方、いるのよね。」

「えぇ？！」

「連盟としては寝耳に水だったから…。所属先の方には連絡いってるのかしら。」

「……。」

強化部長から発せられる言葉の数々に、ただただ絶句する。

なんで…。
Aの存在は、所属先のごく一部の人にしか伝えてなかったはず。

連盟を脱退してからの発表にするつもりだったから、こっちには婚約や結婚に関して何も伝えてなかった。
どうして情報が漏れたんだ！

「連盟としては、知りませんでしたじゃ済まないから、返事を保留してるんだけど…。」

どうする？と言われて頭を抱える。
自分としては、引退後落ち着いて、A側とちゃんと今後のことを確認してから世間に発表したかったのに、いきなりこんな展開になるなんて…。

「連絡とらなきゃ…。」

Aよりもまず所属先に。

震える手で携帯を握りしめ、手早く操作する。
まだ情報を流すタイミングじゃない。かといって、否定はできないから、今の段階で公表できることを吟味しないといけない。

くっそ！まだAのご両親に何も伝えてないのに、これじゃあ完全な見切り発車だ。

「あちらはお相手の名前まで掲載するって言ってるの。」

「はぁ？！」

向こうの思いがけないやり方に手が止まる。
名前…Aの…。

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