【不可能なんてない】2 ☆ ページ21
「恋愛はねぇ、手放すなって書いてあった。」
それでもさらりと言ってのける羽生くんが、握っている手をさらにぎゅっと力を込める。
「ふーん…。」
そんなことしたって無駄なんだから。
いつか絶対、この手を離す日が来るに決まってる。
「そんでー、縁談はぁ…」
「あ、拝殿に到着したからまた後でね!」
もうそれ以上聞きたくない。
私は羽生くんの言葉を遮り、自分から手をほどいて先に中へ入った。
誰もいないことを確認した後、二人で拝殿で手を合わせてお詣りをする。
そんな作法も羽生くんは完璧で、本当に一度ここで『お詣りの仕方講座』的なものをやってくれないかなと感心するばかりだ。
そんな中、一通りお詣りが終わってもまだ御神体の前で正座をしたままの羽生くんが、穏やかな表情のまま、ぽつりと呟いた。
「今回の全日本、自分の中で最後まで滑りきれるか不安だった。」
「え…。」
「25才って、昔みたいに体力が回復しないんだなー。」
ぎゅっと目を瞑って、がっかりしたようにかくんと首をもたげる。
「羽生くん?」
「冒頭のジャンプが2個ともファイナルくらいクリーンに決まってたら…でもそんなんだけで優勝したって嬉しくもなんともねぇし。」
「……。」
独白のように、次々と紡ぎ出される言葉をじっと側で聞く。
「昌磨がショートでいい演技して、俺めちゃくちゃ嬉しかったんだ…。最高のコンディションの昌磨と戦えるって。でも、自分のコンディションが追い付かなかった。」
これは彼の胸の内…?私が気付かなかっただけで、まだ全日本を引きずっているということだろうか。
「理由が分からない敗北ほどつらいものはないよ。でも今回は全部分かってるから。まだ前を向いていける。」
それでも。最後には顔を上げて、いつもの負けず嫌いな羽生くんになる。
「あんまり無理しないでね…。」
そんな彼に、ここで“頑張れ”なんて軽々しく言えない気がして…。でも何が正解かなんて分からないから、寄り添うような励まししか出来ない自分が情けない。
「無理なんかしてないって。」
それでも少し笑顔を垣間見せてくれて、安心はするのだが…。
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鹿(プロフ) - 果歩さん» ありがとうございます!なんだかプログラム変更とか??真実なのかはわかりませんが、和風っていいですよね!更新がんばります! (2020年2月2日 11時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
果歩 - マリッジブルーも羽生君のおかげで解決かな?幼なじみ君早くあきらめてくれればいいのに。笑 次回はどうなるか、またまた楽しみです。 (2020年2月1日 14時) (レス) id: 7087569446 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - るりさん» もっとブルー感を深く掘り下げたらいいのかなって思うんですけど、なんかすぐに立ち直りそうな予感。最近ストックがないので、リアルタイム更新でお待たせしてます〜m(__)m (2020年1月25日 8時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - shifuさん» ありがとうございます!褒めてもらえてうれしいです!更新する度にめっちゃドキドキしてるんですよ〜(;´・ω・)楽しんでもらえたら何よりです^^ (2020年1月25日 8時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
るり(プロフ) - 主人公ちゃんマリッジブルーかぁ、、。早く2人の気持ちがまた近づくといいですね、続き待ってます!! (2020年1月25日 6時) (レス) id: 6fac0f416c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鹿 | 作成日時:2019年12月26日 16時