赤と黒のLiberations8

【壁の先】7　★ ページ34

『それで今一緒にいるんですか。』

「はい。」

納得してくれた様子が伝わってきて、ひとまず安堵する。

『あの子全然連絡してこないから、てっきりお見合いが嫌で失踪したのかと…。』

「落ち込んではいますけど、失踪はしてないです。」

表現がAらしいなと思いつつも、俺はここから二人の未来に向けて模索をするために、早速情報を得る構えに入る。

「それでですね、お母さん。」

『はい…。』

「これは僕が勝手に思っていることなんですけど…。」

『……。』

「もしも、僕がAさんをくださいって言ったら、それは可能ですか？」

『えっ…！』

いきなり結論から伝えると、お母さんがとても驚いた声をあげた。
そりゃそうだろう。いきなり電話でこんなこと普通言わないし、まだそんなに長くない付き合いの中で、結婚に至るまでの過程が早すぎる。

でも色んな状況を把握することは大切だ。そのためには、多少踏み込んだ発言をする必要もある。

『それはつまり…。』

「将来的には結婚も視野にいれたいなと思ってるので…。」

『えぇ？！』

それに、ご両親には心構えをしておいて欲しいのが本音。またいつ、婿養子とかお見合いとかの流れになるか分からないからだ。

具体的にいつどうこうとかは言えないけど、そういう気持ちでいることだけでも伝えておきたかった。

「勿論、後継ぎの件に関しては承知しているつもりなんですけど、実際問題、僕が彼女を手放すことか出来そうにないんですよね。」

『後継ぎ…。』

「そちらの立場もわかってるんです。でも、その時がきたら、僕としては羽生家にきてもらいたいです。…Aさんが継ぐことで話は進んでるんですよね。」

Aは長女で妹はまだ小学生だし、他に適任者はいない。
消去法で考えるのは好きじゃないけど、この場合誰でもおのずとその結論にたどり着く。

するとお母さんが、継ぐかどうかはまだはっきり分かりませんが…。と言葉を濁しつつ言いにくそうに話し始めた。

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