赤と黒のLiberations8

【後悔】7　☆ ページ28

☆主人公サイド

羽生くんをベッドの隅に追い詰めて、頬っぺにキスをした。

自分でも強引だなと自覚しているし、とても恥ずかしいのだけど、そんな態度は微塵も見せずに羽生くんを抱きしめる。

「羽生くん…。」

「A…。」

部屋で羽生くんを待っている間に気付いたことは、私の中で彼との日本での思い出が後悔しかなかったことだった。

限られた時間の中では一緒にいたくても叶わない。
だからこそ、今この瞬間をもっと大切に使いたかった。

「今だけ…今だけこうしていたいの。」

固い胸に顔をうずめて、感触と体温を堪能する。
そんなことがたまらなく幸せなのだ。

「全く…お前は猫か。」

呆れたように言う羽生くんが、壁にもたれたまま、抗うこともなく優しく頭を撫でてくれる。

「羽生くんの前でだけ…猫だよ。」

きっと私は今、大好きなご主人さまに甘える、ただの猫だ。

「どうして欲しいの。」

「キスして欲しい…。」

そして羽生くんからの問いかけに、自分でもびっくりするくらい、さらりとこんな台詞が出てしまい、一気に頬が熱くなる。

大丈夫、私彼女だもん…。そんな信念だけを胸に、期待しつつ羽生くんの行動を待っていると、不意に彼が私の頬に触れて、お互いが見つめ合える位置までそっと上げてくれる。

そして、手のひらで私の頭全体を固定し、無言で口付けた。

「……。」

それはまるで、この部屋で最初に交わしたときのような激しさで…。

夢中でキスに応える中、静かな室内にキスのリップ音とシーツの擦れる音が響き、やがて消えた。

「次は…どうして欲しいの。」

「次は…。」

えっと…どうしよう。
少し考えながらうつむくと、ふと白銀の尻尾が目についた。

なんとなくそれに触れると、羽生くんの身体がびくっとなった。

【後悔】8　☆→←【後悔】6　★

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す