赤と黒のLiberations8

【桜色】7　☆ ページ7

今日のエキシビション、テレビで放送してたんだ…。
今羽生くんが滑っていることがだんだん周囲に広まり、人だかりが増えていく。

「あれま〜、羽生くんだわ。相変わらず綺麗な子だねぇ。」

ふと、隣のおばさんが感心したように呟いた。

「この子、本当に東北の希望やね。一体どうやったらこんな立派な人間なれるんかねー。」

さらにあちこちから、当然のごとく羽生くんを賞賛する声が聞こえる。

そんな良いイメージ、世間一般論なのに…と内心反発している私なのだけど、画面の中で滑る羽生くんを見ていると、本当にそんな気がして心がきゅっと締め付けられる。

「この曲、春よ来いだ。」

そしてまた誰かが呟く。
もちろん知ってる曲だけど、一体彼はどういう想いでこのプログラムを選んだのだろうか…。

「……。」

そんな中、だんだんプログラムが進むにつれて、周りの人たちが言葉少なになっていく。

羽生くんのスケートに魅入っているのだろう。ここにいる誰もが、彼の舞う姿を見て、心が揺さぶられているかもしれない。

「ママ見て！氷に桜の花が咲いてる！」

そんな静寂の中、ふと小さな女の子が画面を指差して叫んだ。

「本当ね。きれいね。」

お母さんらしき女性が穏やかに諭すと、他の人もまたそれに気付いたようで、感嘆の声が辺りを包む。

今白いリンクの上にはピンク色の花が映し出されており、まるで寒い北の大地に本当に花が咲いたようだ。

「春だ…。」

その美しい光景に、ホテルのロビーが自然と拍手に包まれる。

羽生くんが、みんなに春を運んでいる…。
あの細い身体で精一杯、想いを伝えようとしてくれているんだ。

出会いと別れ。夢に向かって、恐れず一歩踏み出そうと。
みんなの幸せと共に…。

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