赤と黒のLiberations7

【スケートカナダ】10　★ ページ10

★羽生サイド

今朝はめちゃくちゃ気分がいい。
スケートカナダでついに優勝したし、ほぼ納得のいく評価での今季最高得点に加え、ワールドのネイサンの得点に近づけたという収穫もあった。

でもループがまた上手く跳べなかった。
ここはもう伸び代と考えて、明日からひたすら練習する中で、さらにこの構成をこれからどう吟味していくかだ。

コーチと相談しつつ、次の試合へと繋げたい。…とまぁ、反省はこれくらいにして、今日のエキシビションのために準備しないと。

ほとんど眠れずに迎えた朝。
取材やらエキシの練習やらで、身体がもつか心配だけど、気力で頑張る！

「そだ。Aからメッセージ来てないかなー。」

念願のスケートカナダで、二位と大差をつけて優勝したんだ。きっと興奮気味の文章が送られてきているに違いない。
羽生くんすごい！とかさ。

「ふふふ。今日はＧＯＥについて熱く説明してやろ。」

今回の大会では、本当に自分の思い描くジャンプで理想の出来映え点をもらえたものが多かった。

回転不足もなかったし、オータムクラシックみたいな不可解な判定もなかった。

自分を信じて道を貫いたことが、結果として良い方向へ導いたのだ。

「えーっと、花山A…と。」

携帯を手にして画面をスライドさせようとしたら、案の定上の方に名前が表示されていた。
ということは、もう既に向こうから何かしらのメッセージを送ってくれたということだ。

やったね。
俺は他のを後回しにして、迷うことなく恋人からのメッセージをタップした。
しかし…。

「……は？」

静かな自室に自分の呆れた声が響く。
頭から冷たい水を浴びせられたかのように、一気にふわふわした気持ちが吹っ飛んだ。

なぜなら、Aからの内容が、想像していたものと違ってたからだ。

「……。」

一文字一文字目で追うにつれ、徐々に自分の表情が真顔になって、さっきまでのいい気分がさーっと冷めてゆくのが分かる。

なんなの。
圧倒的点差で勝って、おまけにカナダ大会初優勝の恋人に送るメッセージがこれなの。

時間を確認すると、少し前に来たのが分かる。
ということは、まだ起きてるな。

俺は迷うことなく電話の通話ボタンを押した。





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