【戦い終わって】8 ★ ページ49
エキシビションの練習のため、会場へ移動する時間が近づいてきたので、Aとの幸せなひとときもタイムリミットを迎える。
「じゃあそろそろ切るね。」
『えっもう?』
そんな中、珍しく拒否反応を示すAに、言い様のない優越感に浸る。
「お前いつからそんな可愛いこと言うようになったの。」
『だ、だって…。』
「何?俺のこと前より好きになった?」
確信犯的な笑みと共に、頬杖をつきながら冗談半分に尋ねると、Aが少し口を尖らせてメルヘンな返答をした。
『このまま時間が止まればいいのに…。』
「俺はどこでもドアが欲しい。」
それに間髪入れず、自分もまたファンタジーなセリフを返す。
理由は、誰にもバレずに今すぐAに会いに行けるから。
『だったら私は…。』
「おいおい、ほんと終わんねーから。」
『あ…ごめん。』
Aが申し訳なさそうに口を押さえる。
バスの時間まであと10分。急いで一階のロビーまで行けば出発5分前だ。
「またゆっくり電話するから。ちょっとだけ我慢しな。」
『うん…。』
「好きだよ、A。」
『ありがとう…。私、スケートやってる羽生くんも大好きだよ。』
「ん?」
『だから、今日のエキシビション。思いっきり楽しんでね!』
「うん。さんきゅ。」
『あと、寝起きでごめんね。』
「いいし。」
短い言葉のキャッチボールの中に、お互いの気持ちを詰め込む。
ちなみに寝起き云々は、むしろ素のAが見れてこっちは役得だ。
『じゃあね…。』
「うん。」
『風邪引かないで?』
「わかった。」
『……。』
そして、名残惜しそうなAに、少しの希望を込めて告げる。
「日本にいる間に、また連絡する。」
『ありがとう…。』
「じゃあ、また。」
『うん…。』
最後は自分から通信を切って。
いつもこの瞬間はつらいけど、ここからはフィギュアスケーター羽生結弦として皆さんのために頑張る。
「頑張る!」
誰もいない部屋で、天井に向かって叫んだ。
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鹿(プロフ) - ミズイハナコさん» よろしくお願いします! (2019年11月25日 15時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - るりさん» N杯フリーめっちゃ緊張しました!屈んだまま動いてるし!^^今回のN杯は結構ターニングポイントなので、じっくりたくさん書きたいので、ファイナルの日程に被らないようにがんばります^^その後はちょっと考えて。さすがに3週間更新ないとかねえ…だめですよね? (2019年11月25日 15時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - みなみさん» インフルのくだり、訂正しました^^私もHDDの容量がやばくて、3年前のN杯とか整理しました。今回も色々録画したけど、結局ネットで見れるので、いつになることやら。EXはてっきりプリンスかと思ってましたけど、春でしたね!そっかそっか。春か〜^^ (2019年11月25日 15時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
ミズイハナコ(プロフ) - 楽しみにしてます! (2019年11月25日 15時) (レス) id: 999282a715 (このIDを非表示/違反報告)
るり(プロフ) - 続き気になります!!2人は会えるのかなぁ、、、(><)やっぱり羽生君は唯一無二で特別すぎる存在ですねー。ファイナルはどうなるか、心臓痛いですね笑 (2019年11月25日 7時) (レス) id: 6fac0f416c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鹿 | 作成日時:2019年10月31日 16時