【スケートカナダ】13 ☆ ページ13
『お見合いなんてAがはっきり断ればよかったんじゃねぇの。』
「…そんな簡単に言わないでよ。」
『いいや、お前いっつも優柔不断なんだよ。一本筋通して。神職者でしょ。』
「……。」
あまりの言われように正直腹が立ったけど、目を閉じて必死に言葉を受け流す。
所詮彼には口では敵わないんだ。そう自分に言い聞かせながら精一杯虚勢を張って。
『そうやってすぐ黙るの、お前の悪い癖だよ。そもそもさ、断る前提のお見合いを何で俺に言うかな。』
おまけにお説教も加わって、私の心がどんどん追い詰められてゆくのを、彼が気付くはずもなく…。
「聞いたのそっちじゃない…。」
『でも断るんでしょ。なんでそんな無駄なことすんの。』
蚊の鳴くような声で言い返しても、その何倍も低くて早口な声で言いくるめられる。
「無駄…?」
『だってそうじゃん。その気もないくせに会うなんて相手にも失礼。』
「……。」
そう言われて、私の言うこと成すこと全てが無駄だと思い知る。
それと同時に、羽生くんとは口喧嘩しても絶対に勝てないし、それこそ時間の無駄なんだということを、ようやく理解して。
『ぜってー上手くいかないわ。』
そう言ってまた正論で私の心を打ち砕いたその瞬間、自然と目から涙がこぼれた。
なんでこんなに言われないといけないの…。
言われっぱなしの自分も自分だけど、いくら羽生くんが絶対王者で彼氏だからって、何でも分かった風に言わないで欲しい。
だんだん自分の心の中の悲しみが怒りに変わってきて、それでも大声で泣きそうになるのをぐっとこらえるのだが…。
「…そんなこと分からないじゃない。」
『え?』
「会ってみたらすっごくいい人で俳優みたいにイケメンで羽生くんよりスポーツ万能で優しいかもよ?」
『お前…!』
早口でそれだけ伝えると突然羽生くんの口調が変わった。
きっと今の一言で彼は怒っただろう。私も、爆発しそうなこの気持ちをもて余したのか、つい思ってもいないことがするっと口から出てしまった。
「私、気が変わった。お見合いの件、前向きに検討するから。」
『はぁ?!』
「どうせ羽生くんは婿養子になれないでしょ。」
『……。』
そうだ。そうなんだ。
羽生くんを黙らせるには、越えられない壁を突きつけるしかない。
でも、こんなの私の本心じゃないのに、なぜか口が言うことをきかなかった。
「もう切るから…。」
どうしていいのか分からなくなって、逃げるように電話を切ってしまった。
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鹿(プロフ) - ミズイハナコさん» よろしくお願いします! (2019年11月25日 15時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - るりさん» N杯フリーめっちゃ緊張しました!屈んだまま動いてるし!^^今回のN杯は結構ターニングポイントなので、じっくりたくさん書きたいので、ファイナルの日程に被らないようにがんばります^^その後はちょっと考えて。さすがに3週間更新ないとかねえ…だめですよね? (2019年11月25日 15時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - みなみさん» インフルのくだり、訂正しました^^私もHDDの容量がやばくて、3年前のN杯とか整理しました。今回も色々録画したけど、結局ネットで見れるので、いつになることやら。EXはてっきりプリンスかと思ってましたけど、春でしたね!そっかそっか。春か〜^^ (2019年11月25日 15時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
ミズイハナコ(プロフ) - 楽しみにしてます! (2019年11月25日 15時) (レス) id: 999282a715 (このIDを非表示/違反報告)
るり(プロフ) - 続き気になります!!2人は会えるのかなぁ、、、(><)やっぱり羽生君は唯一無二で特別すぎる存在ですねー。ファイナルはどうなるか、心臓痛いですね笑 (2019年11月25日 7時) (レス) id: 6fac0f416c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鹿 | 作成日時:2019年10月31日 16時