【力の限り】8 ★ ページ35
★羽生サイド
紫色の衣装に身を包み、再びスケート靴を履きながら出番を待つ。
もう何年も同じ流れで試合に向かうのだが、このNHK杯はいつもと違ってなんだか変な感じだ。
鏡を見た時に思ったのだけど、少し前から耳や尻尾がうずうずしてて、まるで飼い主に会える前のペットみたいになってる。
これ、Aが近くにいるから…?
大きな影響はないからいいけど、これじゃあまるで俺が晴明のしもべみたいじゃないか。
「やだわー。」
肩を落とさないよう、バックステージで身構える。
もうスケートに集中しよ。えーと、最初のジャンプの入りは…と頭の中で4回転ループのシミュレーションをしていたら、すぐ近くのリンクから一際大きな歓声が聞こえた。
滑走者が難易度の高いジャンプを決めたのだろうか。
「はぁ…緊張する。」
そんな中、腕をストレッチするみたいにぐっと横に振り上げる。
…絶対ノーミスしたい。
みんなそれを期待してるだろうし、またそれ以上に自分自身も期待しているから。
せっかくの日本での試合だ。はっきり言って無様な姿は見せたくない。
「よし。」
オーサーに促され、前のスケーターの演技が終わる直前に、カーテンで仕切られた会場へと入る。
そして鋭い眼差しでぐるっと客席を見渡し、まずAのいるであろう場所を確認した。
ジャッジ席のずーっと後ろっつってたけど…。わかんねぇな。
その時、曲の終わりと共に、その思考を遮る拍手が鳴り響いた。
前の演者と入れ替わるように、氷に触れてから勢いよくリンクに入った瞬間、みんなの視線が自分に突き刺さる。
「……。」
いよいよだ。
緊張で押しつぶされそうな気持ちを受け止めつつウォームアップをしていると、ふと声援の中に一際異彩を放つオーラを感じて、なんとなく耳をすます。
そして、あくまでもいつも通りのルーティーンをこなしながら、狐耳をレーダーのように動かしてゆくと、たくさんの声に混じって聞き覚えのある声が脳に届いた。
“頑張って…羽生くん!”
一瞬時が止まって、まるで空間が切り離されたようになったその瞬間、はっと顔を上げてジャッジ席の後方に視線を向ける。
すると、小さいながらも懐かしい面影のある女の子を見つけることができた。
「A…。」
ずっとずっと会いたくて仕方がなかった、自分の大切な人…。
あぁ…そこにいるんだな。
そこから、俺のことを応援してくれているんだな…。
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鹿(プロフ) - ミズイハナコさん» よろしくお願いします! (2019年11月25日 15時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - るりさん» N杯フリーめっちゃ緊張しました!屈んだまま動いてるし!^^今回のN杯は結構ターニングポイントなので、じっくりたくさん書きたいので、ファイナルの日程に被らないようにがんばります^^その後はちょっと考えて。さすがに3週間更新ないとかねえ…だめですよね? (2019年11月25日 15時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - みなみさん» インフルのくだり、訂正しました^^私もHDDの容量がやばくて、3年前のN杯とか整理しました。今回も色々録画したけど、結局ネットで見れるので、いつになることやら。EXはてっきりプリンスかと思ってましたけど、春でしたね!そっかそっか。春か〜^^ (2019年11月25日 15時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
ミズイハナコ(プロフ) - 楽しみにしてます! (2019年11月25日 15時) (レス) id: 999282a715 (このIDを非表示/違反報告)
るり(プロフ) - 続き気になります!!2人は会えるのかなぁ、、、(><)やっぱり羽生君は唯一無二で特別すぎる存在ですねー。ファイナルはどうなるか、心臓痛いですね笑 (2019年11月25日 7時) (レス) id: 6fac0f416c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鹿 | 作成日時:2019年10月31日 16時