赤と黒のLiberations6

【嘘】4　☆ ページ4

☆主人公サイド

突然の激しい雨の中、傘を持ってこなかった私は、結局コウくんの車に乗せてもらい、家まで送ってもらうことになった。

「ありがとう…。」

「いいよ。」

キスされて以来、顔を合わせてなかった私たちだけど、気まずいながらもコウくんは優しい。

「雨すごいな…。」

そんな中、信号待ちの間に、コウくんがフロントガラス越しに空を見上げて呟く。

「うん…。」

つられて私も外を見るのだが、これはしばらくやみそうにないかな。

「……。」

「……。」

特に会話のない車内は静かで、エアコンが程よくきいていてとても心地いい。

今朝、まどかに叩き起こされて安眠を奪われたので、車の揺れとあいまって、このまま眠ってしまいそうだ。

車だと家までだいたい５分あれば着くのだけど、そんなわずかな時間でさえも寝てしまいそうで、私は膝の上に置いているかばんを抱っこするように持ち、眠らないよう力を入れるのだが…。

「ふぁ…。」

まずい、あくびが出てしまった。
どうしよう…眠い。隣にコウくんがいるのに、今とてつもなく眠い。

「あの、A。」

「え。」

「付き合ってる彼氏って、どんなやつ？」

「……。」

眠気と必死に戦っていると、隣から詮索するようなノリで声をかけられる。
正直またかと思いつつも、羽生くんに関しては何も答えられないので、濁すしかないのだが。

「同級生とか、俺の知ってるやつなの。それとも県外？」

コウくんが前を向いたままさらに尋ねる。
やっぱり気になるのかな…。羽生くんは県外どころか、今はカナダのトロントだ。
でもそんなピンポイントな地名、すぐに本人に結びついてしまう。

「ごめん、言えないの。」

「名前も？」

「名前は…田中くんっていって…。今海外に出張中。」

これくらいなら言ってもかまわないだろうと、とりあえず嘘の名前を伝える。
さすがに出張先は教えられないけど、日本にいないことをにおわせておけば、会わせろとか言われなくてすむから。

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