赤と黒のLiberations6

【アドバイス】2　★ ページ11

「はは。分かったよ。でも、うーん…遠距離か…。」

「ハビ、そういうの経験者でしょ。」

これから試合を控えている中、こういう行動が自分らしくないのは承知しているし、場違いなのは分かっているけど、またいつ彼に会えるか分からない。

現役の頃から、俺と違っていつも彼女の影がちらついてたハビが、どんなストイックなことをして関係を保ってたのか知りたいのだ。

でも、なるべく短時間で事を済ませたいので、早くして。と急かしつつじっと表情をうかがう。

「まぁ…大前提として、まめに連絡を取り合うことだよ。」

「え？」

まめに連絡…？
いきなりポジティブな意見を言われて、きょとんとする。

「試合中はさすがに控えるけど、僕は終わったらすぐに連絡してたよ。サイコーだった！って言われたいからね。」

「終わってすぐかよ！え、でもそれだと試合を振り返ることに集中できなくない？」

試合後は、自己分析とか脳内一人反省会とかやりたいのに、すぐ連絡って…。
自分のやってることとは全くの真逆だ。

「それは…まぁ人それぞれだけど、試合が終わったら愛しい彼女の顔が浮かんでしまうんだから、しょうがないよ。」

「しょうがない…。」

予想外のアドバイスがぽんぽん出てきて戸惑う。

「ユヅル、恋愛に関して人間は本能に従うのが一番さ。特に僕たちアスリートはそうしなくてはならない。」

「……。」

「普段きついトレーニングが出来るのは勝ちたいからだろ？」

懐かしい眼差しと、ハビの言い聞かせるような優しい雰囲気。
それが言葉と共に身体にしみ渡る。

「でも、どんなに好きでもタイミング的な感覚のズレってあると思う。めっちゃ集中したいときに電話とか来たら困る。」

たとえ相手がAでも、イメトレ中とかなら殺意さえ芽生えるかもしれない。

「ユヅル。彼女の全部に応える必要はないよ。出たくなきゃ無視すればいい。」

「えー…。」

「君が主導権を握ればいい。連絡は全てユヅルから。相手からはメッセージだけ、とかね。」

「……。」

「なかなか会えないんだから、話したいときに話して、顔が見たいときに見た方がいいんだ。アスリートは我慢が一番よくない。」

「我慢…。」

それが自分の性格上良くないことは、スケートで証明済みだ。

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