赤と黒のLiberations5

【花火】10　★ ページ38

“A、何しよっか”

“私、射的がやりたい！”

“よっしゃ、じゃ勝負ね。ぜってぇ負けねぇよ”

“えー、羽生くんには敵わないよー”

“あはは！大丈夫、教えてあげるから”


「……。」

こんなデートができるなら、苦手な夏でさえ乗り切れそうだ。

「くっそー！会いてぇ〜！」

額に手をあててその場にうなだれる。
昨日距離をとらなくてはと思った矢先に、もう心が折れそうだ。

「…あ、メッセージ。」

そうだ。妄想はこの辺にして、最後に添えられていたメッセージを読まなければ。
俺は携帯を持ち直して、再び目を通す。

「えーっと、お姉ちゃんをよろしくお願いします(*-ω人)…あ、これ妹のまどかちゃんが送ってきたのか。」

そりゃそうか。この角度はどうみても自撮りのアングルじゃない。

へぇ…この子、姉想いの良い子じゃん。
こないだは誕生日プレゼントをせがまれて言い合ってたみたいだけど、仲は良いんだ。

「ふふ、言われなくてもよろしくお願いされますよ。」

そんな姉妹愛に、なんだか微笑ましくなってしまった。
まどかちゃんは俺のガチファンだけど、バレてないからここはちゃんと返事を送らないと。

『まどかちゃん、素敵な画像をありがとう！こちらこそよろしくね！ヾ(☆ゝ∀・)ﾉ』

向こうは今夜中だから、Aのやつ、起きたらびっくりするぞ。

あ、ちゃんと登録名をよしおに変えたのかな。…まぁ変えたから携帯見られても大丈夫だったんだろうけど。

「よしおより。って付けとこう。」

送信して、もう一度浴衣の写真をじっくり眺める。
この隣に自分がいれたらどんなにいいかと、そんな叶わないことを想像しながら。

せめて今は、日本に待ってる人がいることを力に変えて、スケートに還元できれば…いや、しなきゃいけない。

「最高のシーズンになりますように。」

浴衣姿のAをお守り代わりのつもりで待ち受けに設定し、携帯をオフにした。







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