赤と黒のLiberations5

【花火】9　★ ページ37

★羽生サイド

トロントへ来て早１ヶ月が過ぎ、今日で８月もおしまい。

９月の試合に向けて気を引き締める為にも、そろそろAと距離をとった方がいいかなと考え始めている今日この頃。

今夜にでもその旨を伝えようと、まずはベッドから身体を起こす。

「ふあぁ〜よく寝た…。」

昨日は結局めちゃくちゃイメトレしたので、ばたんきゅーで眠ってしまったのだ。
一体今何時かなと、枕元の携帯に手を伸ばす。

「あれ。」

携帯がちかちか光っている。
何かメッセージでも来ているのかと、軽く画面に触れたら、なんと日本にいる恋人の名前が表示された。

「Aじゃん。」

向こうからなんて珍しい。昨日連絡しなかったから心配したかな。
ともあれ早く読みたくて、寝ぼけて開きにくい目をこすり、携帯を上から下へスライドさせる。

そこをダイレクトにタッチすると、２つの画像と１つのメッセージがきていたので、上から順に目を通していくのだが…。

「わっ！」

１つ目は花火の画像だ。
昨日が花火大会なのは自分も知ってたし、Aが気を利かせて送ってくれたのだろう。
綺麗なオレンジ色が画面いっぱいに写っていて、なかなか上手に撮れている。

それはそれでまぁいい。でも問題は２つ目の画像だ。

「これAなの…。」

そこには、浴衣姿で花火を見上げるAが、ちょっと斜め後ろから、うなじを強調したアングルで写っていた。

その色っぽい仕草と大人っぽい浴衣が、いつもと違う雰囲気を醸し出していて、見ているだけでドキドキする。

「つか髪まとめて結ったらこんななんだ…。」

いつもは後ろで簡単にくくっているだけだし、オフの時は下ろして自然な感じにしてるのしか見たことがないので、めちゃくちゃ新鮮だ。

「かわい…。」

率直な感想だけど、ただただかわいいしかない。

「やべぇぞ…このAはまじでやべぇ。」

何故か携帯片手に、パジャマのまま自室を右往左往してしまう。
だって、こんな子連れて夏祭りとか…ぜってー楽しいに決まってる。

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