赤と黒のLiberations5

【花火】4　☆ ページ32

「妄想ぐらいさせてよ。」

「とにかく！そろそろ現実を見て夏休みの宿題を…。」

もう羽生くんの話題から抜け出さなくてはと、私はワークの進み具合を確認するために机に手を伸ばす。

「じゃあこの時計があったら頑張る…買って。」

しかし幾度となくスマホの画面を差し出してくるまどかの要求は底無しだ。

「はぁ？バカなこと言うのも大概にして。いくらすると思ってるのよ。」

「じゃあ羽生結弦プレミアムセットの切手で我慢する。このSEIMEIのチャームはお姉ちゃんも欲しいよね？」

まどかが素早く人差し指をスライドさせて、また別の画面を表示した。

「……。」

それは私もちょっとかわいいなって思ってたやつだ。
衣装がミニサイズで再現されており、かなり精巧に出来ている優れもの。

「２セット買ったら少しお得なんだよ？」

それは知ってるけど、小学生の妹からしみじみと諭されるのは微妙な気分だ。

「今それは置いておいて、夏休みのワーク！」

気を取り直すために、ばしっと机を叩いてやる気を出させるのだけど…。

「せめて何か買ってくれないと宿題できな〜い。」

まただらけた動きでベッドへ逆戻り。
仕方ない、ここは一番手が出そうなやつを買ってやるか。

「…じゃあチョコで我慢して。」

「チャームも。」

「は？」

「切手付きチャームも買って。」

「違うし！チャーム付きの切手！」

チャームを買ったら切手がおまけで付いてくるみたいに言うな！

「どっちでもいいから。」

「……。」

ちなみにチョコは３セットね。と指で３を作って私に見せつける。
これは切手と合わせて、また１万５千円コース確定なのだろうか…。

「枕もなんかくたびれてきたなぁ〜…。お姉ちゃん、オーダーメイドしない？」

「しないしさせない。それより早く宿題して。」

そんな中、まだふざけたことを言うので、目を細めて冷たい視線を送る。

「…チョコとチャームは？」

それに負けじと、妹も上目遣いで私の心を揺さぶってくる。

……。

「もう買ってあげるから、今すぐ机に向かいなさい！！」

「はーい！」

私の怒りの声をものともせず、ベッドから元気良く飛び出るまどか。

結局こうなってしまった。
もう絶対にこれ以上何も買わないぞと、強く心に誓った私だった。





.

【花火】5　★→←【花火】3　☆

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す