赤と黒のLiberations5

【ホーム画面】3　★ ページ3

「待って！ユヅル！」

「……。」

それでも呼び止めるように声をかけてくるので、絶対に振り向くものかと聞こえないふりをして進みつつ、さらにスピードを上げると…。

「携帯忘れてるわよ！」

「へ？」

携帯？！
しまった！慌ててポケットに手を突っ込むのだけど、勿論そこには何もなく…。
さらに勢いのままに振り向いたら、さも今メドベデワが見覚えのある金色の携帯を掲げていた。

俺は首をぐるっと回すように踵を返し、元いた場所まで戻る。
焦っているのがばれないように、あくまでも冷静沈着な早歩きで、だ。

「あ。」

すると、メドベデワが携帯を持ち変えたはずみに、手の中の画面に視線を向けた。

「よせ、見るな！」

俺は早歩きからの大股で、ずかずかと近寄る。
最近の携帯は画面に軽く触れるだけで起ち上がるようになってるんだ。
パスワードを入れなきゃ中身は見れないけど、今はホーム画面を見られるわけにはいかない！

俺はさっと右手を伸ばして、メドベデワの手にある自分の携帯を奪い返した…つもりが…。

「きゃーかわいい！アニメの世界にいる女の子みたい〜！」

寸前の所でくるっと背を向けられて、自分の手が空振りする。
やべっ見られた！

「ほんっとにやめて。返せ！」

「ねぇねぇ！これコスプレでしょ？」

そして再び俺を振り向き、印籠のように画面を向ける。
そこには勿論、巫女装束に身を包んだ俺の彼女であるAが…。

「…違う。」

「嘘ばっかり。私知ってるもの。ユヅルって彼女にコスプレさせる趣味があるの？」

「んなわけねーし！」

からかいながら言うメドベデワを否定しながら、今度こそ携帯を奪い返す。

「そんなムキにならなくてもいいじゃない。大丈夫。誰にも言わないから。で？馴れ初めはどんな感じなの。教えて！」

さらに興味津々にぴょんぴょん跳ねながら食いつかれる。…つかあまり大きな声を出さないで欲しい。

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