赤と黒のLiberations5

【再会】3　☆ ページ11

「なぁ、A。羽生結弦と付き合ってるのか。」

コウくんの表情がだんだん自信に満ちたものになってゆく中、真っ直ぐな視線が私に突き刺さる。

どうしよう…どうすればいいの。
こんな時、羽生くんなら何て言うだろう。
あの論破する能力と口が、今とてつもなく欲しい…！

「わ、私は…。」

あ、待って。そ…そう言えば、前に三人で鉢合わせしたとき、何か白々しいことを言ってなかったっけ…。

コウくんのプロポーズをかわした時の会話に、何かヒントがあるはず…。
えーっと、確か…そ、そうだ！

「もしそうなら、そんなリスクの高い恋愛なんて…」

「羽生くんだって、応援してくれてたじゃない！」

「え…。」

私は記憶の底から、ここでプロポーズされたときの羽生くんの言葉を思い出して、それをそのままコウくんにぶつける。

「プロポーズにだって立ち会ってくれたし、次まで四年寝かせた方がいいってアドバイスまでくれたでしょ！」

あの時の羽生くんは阿修羅モードで、完全に表向きの発言しかしてなかったけど、精一杯それを真実っぽく伝えて。

「確かにそうだけど…。」

「そんな親切な人が、私と付き合ったりするわけないでじゃない。少しは考えなよー。」

そしてこれみよがしにコウくんの背中をばしっと叩く。
頼むからこれで引き下がって！

「そうなのか…。でもA、やっぱりどことなく以前と違うような気がするんだよな。」

「気のせいだよ。」

コウくんが腕を組んで考え込む。でもすぐに吹っ切れたように私を見つめた。

「じゃあ、俺のこともう一度考えてくれ。」

「…へ？」

「やっぱり諦めきれないんだ。」

「……。」

だから。なんでそうなるの！
私は開いた口が塞がらなくて、呆れる気持ちを通り越し、怒りが沸いてくる。

「誰とも付き合ってないなら、いいだろ。」

しかもこの独りよがりな考え方！
羽生くんもわがままだけど、あれは自分自身に厳しいのであって、相手にはちゃんと思いやりをもって接している。

この、コウくんのそれとは全く違う言い草に、私の心の中で何かが弾けた。

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