赤と黒のLiberations4

【ラーメン】7　☆ ページ7

「Aさん、そこに紫陽花と並んでよ。」

「？」

ふと、携帯を私に向けて、カメラマンのように覗き込む素振りをみせる。

「早く。」

「どうして？」

「どうして！それ聞くんだ。あーあ、引きこもりの彼女を持つと疲れるわ〜。」

返答がまずかったのか、いったん手を下ろして、今度はすごく面倒くさそうな表情を向けられる。

「引きこもりって言わないでよー。妖怪見たくないだけだもん。」

「わかったわかった。ほら、Aさんの写真撮るからこっち向いて。」

私の写真を撮ってくれるんだとわかって、慌てて笑顔を作る。
羽生くんが慣れた手つきで画面を操作したら、ぴろん。と音がした。

「どんなの？ねぇ、変な顔じゃない？」

「俺写真撮んの得意だから。うん、上手く撮れてる。」

一応出来上がりが気になるので、彼の腕を掴みながら一緒に携帯の画面を覗き込む。

「紫陽花より顔おっきくない？」

「普通だし。じゃ次二人で撮ろう。」

今度は私の肩に腕を回し、携帯を持つ手を前方に伸ばして、自撮りするように携帯を構える。

ふむふむ、これは恋人同士としてのツーショットだな。今度は理解した。

「巫女装束とジャージって、謎のシチュエーションだね。」

「あはっ！辺な組み合わせだな。巫女とアスリート。」

そう言って、不意に羽生くんが私に寄りかかるように、頭をこてんと乗せた。
そんな至近距離で感じるユリの香りに戸惑っている間に、シャッターボタンが押される。

「……。」

「よし、撮れた。」

二人で写真を確認したら、なかなか上手く撮れていて安心する。

「羽生くんて写真撮るの好きなの？」

その流れで、羽生くんの携帯のアルバムに画像がたくさん入っているのが偶然目についたので、なんとなく尋ねてみる。

「うん好き。旅行とかは行かないけど、試合会場で見た風景で残したい瞬間はいっぱいあるから。まぁ、本番はプロのカメラマンさんが撮ってくれるから、自分ではそんな持ってないけど。」

見る？と携帯を出してくれたので、お言葉に甘えて見せてもらうことにする。
私は旅行どころか、県内から出たことだってほぼないのだ。

「へぇー、海外が多いね。」

「それオリンピック会場だ。」

「ほんとだ！五輪のマークがある。」

２年前、韓国で行われた平昌オリンピック。スポーツに疎い私でも、さすがにこれはテレビで見ていた。

【ラーメン】8　☆→←【ラーメン】6　☆

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す