赤と黒のLiberations4

【尻尾】3　☆ ページ46

「とりあえず今日はそのまま過ごそう？尻尾のことは頑張って忘れて…。」

『頑張ってっつってもさぁ…こんなの誰にも理解してもらえねぇし…。』

「私ももう一度九尾の狐について調べてみるから。」

困った時は原点回帰だ。九尾についての逸話を片っ端からさらってみたら、何か分かるかもしれない。

『ほんとに…？』

「うん。何か手がかりを見つけるから。」

落ち込んでいる羽生くんへ、言葉だけでも精一杯前向きな気持ちを伝える。

『今日これからクラブで練習なんだよ…。』

「うん、大丈夫。羽生くんは尻尾くらいでメンタルが崩れたりしない。」

『……。』

「衣装の一部だと思えばいいよ。」

ひらひらが、たなびくのと一緒だ。

『そうだよな…やばい。取り乱した。』

髪を整える仕草をしつつ、はっと息を吐く。
すると女性の声がして、羽生くんが隣を振り返った。

『あ、母さんだ。じゃあとりあえず切るわ。ごめんな、夜中に起こして。』

「ううん、いつでも連絡してね。」

尻尾が生えたら誰だってパニックになるだろう。
それに対し、意外と冷静に対応している自分に驚きつつも、次はひげかもしれないよとは、さすがに言えなかった。





その日の夜。
自室で九尾について調べていると、まどかが携帯片手に飛び込んできた。

「お姉ちゃん！お姉ちゃん！見て、このロス期に最新の羽生くんきた！」

ファンの間では、羽生くんが表に出てこない今の時期をロス期(もしくは砂漠期)と呼び、日々潤いを求めているらしく、勿論まどかも私もその一人だ。
そんな中、一枚の画像を見せてくれる。

「あ、ほんとだ！」

そこにはブロンドの髪の女の子の少し後ろに、ピースをして立っている羽生くんが写っていた。
頭には狐耳がしっかり生えているけど、尻尾は隠れていて見えない。

「きっと羽生くんと同じクラブの子が撮ってもらったんだよー。」

ジュニアの子かな。そう言えば意図的にＳＮＳでトロントでの近況を伝えるって言ってたっけ。
ということはこれが…。

「元気そうだね。」

夜中はすごく元気がなかったのに、少しは吹っ切れたのかな。

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