【想い人】4 ☆ ページ39
☆主人公サイド
羽生くんがトロントへと旅立って丸ニ日が過ぎた。
たった二日なのに、もう心にぽっかりと穴が開いたようで、正直何も手につかない。
今だって、朝ご飯も食べずに、リビングのソファーで携帯片手にだらけているだけだ。
「羽生くん、今ごろトロントのスケートクラブかしらね〜。」
そんな落ち込んだ私の心をえぐるように、お母さんがやたらと羽生くんのことを話題にする。
「さぁ…まだトロントに着いたっていう連絡ないけど。」
ほぼ毎日のように社務所で過ごした日々を、もう懐かしく思いながら、今日何度目かのため息ををつく。
そして携帯のホーム画面にいる笑顔の羽生くんを眺めつつ、またため息。
「ねぇA。羽生くんとキスくらいした?」
「……。」
うるさい。どうして親ってこんなにうるさいのか。
からかいたいだけなのが見え見えなので、その質問には絶対に答えないぞと口をつぐむ。
「教えてくれてもいいじゃなーい。」
にやにやしながらまだ言うので、もうこれ以上一緒に会話したくない私は、2階の自室へ行くために無言でソファーから立ち上がり、リビングから出る。
暑いけど、お母さんの相手をするよりましだ。
「あーあ。」
部屋に入るなり、ベッドにダイブする。
この二日間、ずっと携帯を握りしめては、羽生くんからの連絡を今か今かと心待ちにしている自分を、1ヶ月前に誰が想像できただろう。
重症だ。恋愛って人を変える…。こんな私でさえ、恋人に対する想いが日々どんどん強くなる。
「キス…したんだよね…。」
夜のパーキングエリアで、自然と気持ちを通わせ合った私たち。
恋人同士になるって、こういうことなんだろうな。
身も心も、相手と一つになりたいと思うことが恋愛なのだと、経験してみてやっと分かったし、羽生くんが私の身体に触れる度に、もうどうにでもしてくれと、感じたことのない欲求が溢れた。
もしトロントへ行くことを、車内ではなく、二人きりの社務所で聞いていたら、おそらく最後まで…。
「その方が良かったかも…。」
押し寄せる後悔の念。
あのまま、羽生くんの全てを受け入れていれば、こんな喪失感は無かったかもしれない。
とにかく私は、羽生くんに一年も会えないことが、悲しくて寂しくて仕方がないのだ。
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鹿(プロフ) - みなみさん» そうなんですよ!はや九月。もうオータムもそこまでなので、そろそろお話を進められそう!^^ゆずの曲はまだ聞いたことがないのです。あまりCM見ないので… (2019年9月2日 17時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
みなみ - あっという間に9月になってしまいましたね。A.C.が近づいてきていますね。どんなプログラムなんだろ。今更ですが、ゆずの「SEIMEI」って、平昌のゆづの「SEIMEI」からとっていたりするのかしら?CMで耳に目にする度に考えてしまいます。 (2019年9月1日 23時) (レス) id: 42f93678ff (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - みなみさん» しっぽも役に立つ日が来ます絶対(笑)トロントへは行かないですが、遠距離って書いてて楽しいかも^^思いやりが生まれます。羽生さんの中身をもっとしりたいなあ〜…。もちろんオフレコで(笑) (2019年9月1日 9時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
みなみ - 更新ありがとうございます。深刻なのになんか面白い展開になってますね。ヒロインちゃん、トロントに行っちゃう?お母さんのOKというか、そういう人でないとゆづ本人が納得しないんじゃないかな。逆に、ゆづが選ぶ人はかなりの才色兼備な人ということ。ハードル高い! (2019年8月31日 18時) (レス) id: 42f93678ff (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - みなみさん» そろそろみなみさんからコメントきそうだなーって思ってました!(^_^)私は密かに、結婚しないんじゃないかなーって思ってます。そもそも人を本気で好きになったことなさそう(笑)それにお母さんのオッケーが出なきゃだめっぽくないですか? (2019年8月31日 6時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鹿 | 作成日時:2019年8月7日 17時