赤と黒のLiberations4

【雨宿り】13　★ ページ25

「え、本当？」

「つか、体調もほぼ普通かも。」

身体を動かしつつも、さっきから元気にしゃべれてる。

「一体何者なの、あの子…。」

「座敷わらし…？」

「……。」

「……。」

果たして本当にそうなのか、断言はできない。
しかし、今更ながらじわじわとよく分からない恐怖が押し寄せてきて、変な汗が出る。

「は、羽生くん…。」

Aさんも同じ気持ちなのか、珍しく俺にすり寄ってきた。

「大丈夫…もう大丈夫。怖くない。」

「本当に…？」

「だって、俺の風邪を治してくれたし。」

髪を撫でながら、ここはせめて精一杯前向きな言葉で場を和ます。
妖怪と会ったかもしれないなんて、強がらなきゃ怖すぎる。

「でも…。」

「じゃあこっちおいで。一緒に寝よ。」

「う、うん。」

えっ！今絶対断られると思ったのに、めっちゃ意外な展開！

何の気なしに言ったのに、こいつ、一緒に寝るって意味分かってんのかよと思う。

「えっと…腕まくらとか、する？」

やべぇ、落ち着け…。ここであたふたしたら、ちょうカッコ悪い。

「いいよ、それより風邪なんだから一応マスクしてね。」

「……。」

内心どきどきしていると、Aさんからド正論のセリフをくらって言葉を失う。
あ、そうだ…俺一応病人だったんだ。

「ちっちゃい電気付けてていい？」

「うん…。」

言われた通りマスクをして、普通の素振りを続けるAさんとの温度差に戸惑いつつも、今日はこのまま大人しく寝る事になるんだろうかと寂しく思う。

そんな中、徐々にAさんが俺の布団に入ってくるのだが…。
この子、この状況に対する俺の精神状態を理解しているのだろうか。

好きな子がこんな近くにいて、何もできないという極限状態を表す日本語を誰か教えてくれ！

「ハグするくらいは、いいでしょ。」

悔しいので、抱きしめる途中、どさくさに紛れて髪にちゅーした。
まぁマスク越しだけど。

「羽生くんこそ、暑くない？」

「暑くない。」

梅雨だし、まだ肌寒いくらいだ。

「おやすみ…羽生くん。」

「おやすみ。」

スウェット越しに感じるAさんの体温。
ホテルで素肌のまま抱き合ったことが懐かしいなと思いつつ、そっと目を閉じた。





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