赤と黒のLiberations4

【雨宿り】5　★ ページ17

「おにぃちゃんやさしいからすき！」

「そうそう。お兄ちゃんは優しいの。お姉ちゃんは大人げない。」

妖怪関係限定だろうけど。

「やめてよ子供の前でー。」

「おねぇちゃんは…なかま！」

「仲間って！」

女の子が最もなことを言うので、思わず読み札を持ったまま手を叩いて笑ってしまった。

「妖怪マニア同士ってこと？…まぁ詳しいけど。」

「おにぃちゃんもぉ、はんぶんなかま。」

「あら。」

Aさんも自分で納得する中、俺もか、と頭をかくんと横に倒してすぐ起こす。

「結局羽生くんもここでカルタしてるから仲間なんだよ。良かったね。」

「不本意だわ〜。」

妖怪好きに混じってるみたいだ。

「ほら、早く読んでよ。まだ勝負はついてないんだから。」

Aさんの一声で、また二人が真剣に絵札を見渡しだした。

「はいはい。おほんっ、…ちょっと喉の調子が悪いな。じゃ読むよー、海坊主…」

「はーい！」

そして上の句を読んだだけで、Aさんが、ばしっ！と『う』の絵札を取る。

「おねぇちゃん早すぎるよぉ〜。」

「ふふふ。海系の妖怪はかなり勉強したから。」

またしてもどや顔をきめたら、女の子が悔しそうに手足をばたばたしだした。

「Aさんは妖怪カルタ名人なの？それともただのマニア？」

「違うよ。普通の人間だよ。」

嘘つけ、安倍晴明のくせに…。
まぁいい。でも女の子の機嫌を損ねたら色々面倒なので、ちょっと読み札の順番を変えておく。

「なんか妖怪が絡むと人が変わるんだよな。じゃ次読むわ。えーと、ちょうちんの…」

「これーっ、ちょうちん小僧！」

すると当然、女の子がすぐ側にある絵札をばっと取った。

「わー！だから目の前に置くのずるいってばぁ。」

「……。」

だ、か、ら！いい加減に空気読め！と、視線で訴える俺。

「やったーやったー！」

それでも、喜ぶ女の子とうなだれるAさんが対照的だなと思っていると、不意にAさんがおかしな事を呟いた。

「ちょうちん小僧は私の初恋の人なのに…。」

はぁ？

「恋愛対象が妖怪なの？！」

「えー…。だって夜道を照らしてくれるんだよ？あんな優しい妖怪なかなかいないから。」

ひょっとして会ったことがあるのだろうか。
なんだか、頭痛くなってきたわ…。






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