赤と黒のLiberations4

【ラーメン】4　☆ ページ4

「私普通だし…。」

「え、何が普通なの？」

「なんでもない。先お風呂入る。」

運転はそこそこ疲れる。
さっぱりと汗を流してから晩ご飯にしよう。





「あーあ、普通か…。」

湯船につかりながら、車の中で会話してからずっと引っ掛ってる言葉を心の中で反芻する。

誰と比べてるのかは知らないけど、羽生くんが今まで付き合った女の子の中では、大したことないレベルなんだ、私は。

胸だって普通だし、スタイルも普通。
鍛えた方がいいって言われたから、彼の中では中の下なんだろうな。

「もしくは下の上…？」

どっちにしろあんまり変わらない。
やっぱり断れば良かったかなー…。羽生結弦と付き合うなんて、百害あって一利なしかもしれない。

「私のこと、時々お前って呼ぶし…。」

…そうだよ。いっつも上から目線だしドＳだし？

おまけにわがままで子供で典型的なＢ型で口が悪くて運転に文句言ってお酒に弱くて真面目なくせにたまに腹黒いガチガチのアスリート！

「でも…、私の初めての人…。」

あーもう、なんでホテルなんか行ったのかなぁ。
お酒飲もうなんて、死んでも誘うんじゃなかった、と後悔の念に浸りつつ、濡れた手で髪をぐしゃぐしゃにかき混ぜる。

羽生くんが有名人じゃなかったら…。九尾に取り憑かれてることも知らずに、会うこともなかった。

私がスケートを見ることもなかったし、こんな風に、胸が苦しくなることもなかったのに…。

なんだか無性に泣きたくなってしまった。





お風呂から上がると、ちょうど晩ご飯ができていて、まどかが嬉しそうに食べる準備をしてた。

「ラーメンなの？」

「Aの彼氏に頂いたブラックラーメン。まどかがどうしても、食べたいっていうから。」

テーブルには、香ばしい匂いと共に、お母さんが作った四人分のラーメンが黒い光を放っている。
てか今夜はお寿司って言ってたのに…。

「これ、まどかも食べたかったんだよねー。富山公演のケータリングで出てたやつー。」

相変わらずショーに詳しい妹が、情報を織り混ぜながら、いただきまーす。といち早くラーメンを口にする。

「それにしても黒いラーメンねぇ。スープを開けた時お母さんびっくりしちゃった。」

「本当に真っ黒…。羽生くんみたい…。」

なんとなく鼻を近づけて匂いをかぐ。
黒い羽生くんが黒いラーメンをお土産に持ってきてくれるなんて、自分の中ではギャグに近い。

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