【3パーセント】8 ★ ページ49
さっきまで早く帰れなんて思ってたのに、もう会えないと思うといきなり喪失感が押し寄せるなんて…らしくない…。
「俺もうお腹いっぱい。」
「もう?まだこんなに残ってるのに。」
お皿の上には、三角にカットされたサンドイッチが半分以上残っている。
「いっつもこんくらいで充分なの。」
「そうなんだ。あ、じゃあお酒でも飲む?」
「え?」
サンドイッチの次はお酒か。
つかこの子は本当に俺の事を何にも知らないんだなと思う。
俺がお酒を飲まないことは、ファンの間じゃ有名なのに。
一般人の認識ってそんなもんなのかなと思っていると、花山さんが俺の返事を待たずに、冷蔵庫からかわいいデザインの缶チューハイを取り出した。
「マスカット味でいい?」
「いらねーし。」
「祝杯だよ。最後にさ、乾杯しよう!」
そんなノリノリの花山さんを見ていると、いつもなら即刻断るのに、なんとなく流されてしまいそうになる。
確かにこのシチュエーションは最後の晩餐と言えなくもないし、あれだけ苦しめられた九尾を退治できた手間、パーっと飲みたい気持ちは分かる。
でもお酒が全く飲めない自分としては、やっぱりアスリートとしてここは断る。
「俺コーヒーでいい。」
たしかサンドイッチに付いてたのがまだあったはず。
「もう飲んじゃった。」
「え。」
花山さんがおもむろに缶チューハイを開けて、二つのグラスに注いでゆく。
そのジュースのような見た目と、甘いマスカットの香りがだんだん鼻をくすぐって…。
「しゅわっとしたマスカット。美味しいんだよ?はい、羽生くん。」
「……。」
ぴったりに分けられた同じ形のグラスを差し出されて、受け取るべきか悩む。
いや、やっぱりお酒はだめだ。一度飲んでろれつが回らなくなった記憶しかねぇ。
「あー美味し。甘くて飲みやすいから。羽生くんも飲んでみてよ。」
目の前でやたら勧めてくる花山さんは、まるでジュースでも飲んでいるかのようだ。
「酔わないの?」
「アルコールたったの3パーセントだよ。」
3パーセント…そんなもんか。
グラスを手にとって匂いを嗅いでみる。そして試しにちょっとだけ飲んでみると…。
「甘っ。マスカットジュースじゃんこれ。」
「でしょ?」
びびって損した。
3パーセントって全然たいしたことないんだなと、気持ちが大きくなった。
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鹿(プロフ) - みなみさん» 触れるとか設定は、適当なんですけどね^^まあ差別化ということで。次移行なんですけど、このままでは現実の羽生さんに追いつくので、どうしようかなーと模索中です。 (2019年7月5日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
みなみ - おっと、何やらゆづがいつもと違って、ますます展開が楽しみです!狐耳、触りたい〜!!本人には見えているだけで触れないなんて、不思議ですね。 (2019年7月4日 13時) (レス) id: 42f93678ff (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - みなみさん» 狐耳にはあまり深い意味はなかろうと思います。ただ、二人を繋ぐものが何もなくなってしまうと、お話を進めにくいので、伏線のようなものでしょうか。でも、耳ついてるのを妄想しながら色々見返すという妄想観賞ができます。←! (2019年7月1日 7時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - るりさん» ついつい連続で更新してしまいました。出し惜しみは絶対王者がお気に召さないので(笑)でもみなさん注目ポイントが違ってて面白いですね(*^^*)ちなみに狐さんはもう出てきません。あっさり消えました。 (2019年7月1日 7時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - ゆなさん» 常に気になる所で終わっちゃうという(笑)後2話手前だともっと気になるかなーと思って、これでも足しておきました。たくさん更新するのは、自分が読者側だったら嬉しいからです(*^^*) (2019年7月1日 7時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鹿 | 作成日時:2019年6月21日 16時