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【わかるでしょ。】10 ★ ページ47

「一気に剥がさないでね。痛いから。」

「子供じゃあるまいし。」

文句を言いつつも、優しく剥がしてくれることを俺は知っている。

「そうそう、ゆーっくりね…。」

「けっこう剥がすの難しい。」

指をそっと動かしながらテーピングを剥がしてゆく。

さらに彼女の左手が俺の肩口に置かれ、力の支点となる部分をしっかりと体重をかけるように添える。
その流れで、不意に花山さんの手のひらが、上半身裸の俺の背中に広く触れた。

「ふわぁっ!!」

「な、何?!」

その瞬間、二人共にびっくりしてその場で飛び上がる。

「今何か…え。」

花山さんが触れた場所から身体の内側にかけて、ぞわぞわした感覚と共に、明らかに何か熱いものが移動した。

でもそれはすぐに消えて、再び身体の中は元に戻る。

自分の胸に触れながら、今のが一体何なのか考えてみるのだけど、その答えは一つしか浮かばない。

「羽生くんどうしたの…。」

「九尾…。」

「え、出てきたの?!」

違う。厳密に言えば、出てきそうだった。
俺はもう一度試してみたくて、花山さんの手を取る。

「花山さん、もう一度俺の身体に触れてくれない?」

「え、どうして?」

「九尾が嫌がって、身体の中を安全な方へ移動したんじゃないかと思う。」

ちょうど、花山さんが触れた場所から真逆の方向に動いた。
これは絶対に、九尾が花山さんの手から逃げたんだ。

「こ、こうかな。」

指先で軽く触れるようにするのだが…。

「違う。両手で触れてみて。」

今度は向かいに立ってもらって、両てのひらでお腹を押すように触れてもらう。

するとやはり今度は背中側に九尾が移動した。

「やっぱり…。これ素手の方がめっちゃ効果ある。」

抱きしめるのとはかなり違う。
手の温もりがダイレクトに伝わって、あったかくなる。

「Tシャツの布一枚でそんなに違うんだね。」

「よっしゃあ!これでまた一歩、九尾退治に近づいたぁ!」

新しいことを発見した嬉しさで、かなり興奮気味な俺は、ぐっと拳を握って何度も空中で小刻みに震わす。

「そんなことより早く服着てよね。あ、お父さんが九尾について相談にのってくれるっていうから、母屋で朝ごはん一緒に食べない?って誘いに来たんだった。」

「そうなの?すぐ行くわ。」

今発見したことも踏まえて、じっくりお話するのもいいかもしれない。
俺は急いで新しいTシャツに袖を通した。





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鹿(プロフ) - 雪菜さん» ありがとうございます!面白いと言っていただけて嬉しいです。怖い話は苦手です^^;今回は心霊とは違うのですが、和風っぽくしたいなと思ってます!^^ (2019年6月17日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
雪菜(プロフ) - おはようございます、新しい話も面白いです!私は昔から心霊とかそういった話が好きです。本当にあった怖い話という ものがあります。そのなかでも山本まゆりさんの恐怖進行刑(ショックリポート)です面白いので読んで見てください (2019年6月16日 9時) (レス) id: 67e9c24f43 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - 心菜さん» 毒ガスが噴き出ているところでしょうか^^調べているときに見たような。あまり九尾ネタが広がらなかったらごめんなさい!今回は短めのお話にしようかなーと、更新早めを目指してます! (2019年6月15日 18時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
心菜(プロフ) - 新作!ありがとうございます。栃木県の那須塩原市に殺傷石と言う所があって、九尾の狐伝説があります。宜しければご参考まで。また楽しみに読ませて頂きます。 (2019年6月14日 21時) (レス) id: 15da2c977a (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - みなみさん» 私も調べてみたら、晴明と繋がっていることがわかって、これなら書けるかなーと^^神事とかはもう適当でねつ造ばかりなので、突っ込まないでくださいね〜! (2019年6月14日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鹿 | 作成日時:2019年6月10日 16時

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