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【雨】2 ★ ページ32

「せめてサインだけでも!」

「コウくん、配達の途中なんでしょ。ここで油売ってていいの?」

「あ、いけね。じゃあまたな、A!」

よほど配達とやらが急ぐのか、あっという間に軽自動車ごとここから去って行ってしまった。
素直なのはまだ救いようがある。

「ごめんね慌ただしくて。老舗蒲鉾屋の次男坊なの、彼。」

「いや、いいよ。あ…なんならサイン書こうか?」

一応花山さんにはお世話になったし、サインくらい減るもんじゃない。
仙台市内じゃ当たり前に飾ってあるから、わりと制限はしない主義だ。

「え、いいの?じゃあコウくんのとまどかのと、二枚お願いします!」

あ、自分のはいいんだ…。
遠慮したのかどうかは分からないけど、紙とペンを取りに踵を返した彼女に、深く聞くのはやめる。

「待ってる間にタクシー呼んどくから。」

その背中に声をかけて、携帯の画面を操作しつつ履歴を辿る。
そして、すぐ一番上に出てくる番号を押そうとしたら…。

「え、タクシーで来たんですか?」

花山さんが驚いたように振り返って、俺を凝視した。

「うん。バスはちょっと分かんないし。」

「えー!コウくんに駅まで送って貰えばよかった!」

「彼配達の途中でしょ。さすがに悪いよ。」

あんなに慌てて出て行ったのに、さすがに駅に寄ってもらうのは気がひける。

「そっか…。あ、じゃあ私が送ります。」

「え、免許持ってんの。」

意外なセリフが聞こえて、そのギャップにこっちも驚く。
けっこうなよなよした雰囲気なのに、取るもん取ってんだな。

「一応。月に何度かは運転しているので、大丈夫です!…たぶん。」

ちょっと自信なさげなのが気になるけど、俺ももう少し色々聞きたいことがあるっちゃあるし…。

「じゃあ…お願いしようかな。」

再び携帯をポケットにしまう。
お言葉に甘えて、仙台駅まで送ってもらうことにした。





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鹿(プロフ) - 雪菜さん» ありがとうございます!面白いと言っていただけて嬉しいです。怖い話は苦手です^^;今回は心霊とは違うのですが、和風っぽくしたいなと思ってます!^^ (2019年6月17日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
雪菜(プロフ) - おはようございます、新しい話も面白いです!私は昔から心霊とかそういった話が好きです。本当にあった怖い話という ものがあります。そのなかでも山本まゆりさんの恐怖進行刑(ショックリポート)です面白いので読んで見てください (2019年6月16日 9時) (レス) id: 67e9c24f43 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - 心菜さん» 毒ガスが噴き出ているところでしょうか^^調べているときに見たような。あまり九尾ネタが広がらなかったらごめんなさい!今回は短めのお話にしようかなーと、更新早めを目指してます! (2019年6月15日 18時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
心菜(プロフ) - 新作!ありがとうございます。栃木県の那須塩原市に殺傷石と言う所があって、九尾の狐伝説があります。宜しければご参考まで。また楽しみに読ませて頂きます。 (2019年6月14日 21時) (レス) id: 15da2c977a (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - みなみさん» 私も調べてみたら、晴明と繋がっていることがわかって、これなら書けるかなーと^^神事とかはもう適当でねつ造ばかりなので、突っ込まないでくださいね〜! (2019年6月14日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鹿 | 作成日時:2019年6月10日 16時

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