赤と黒のLiberations

【困惑】4　☆ ページ4

☆主人公サイド

夜ごはんの最中、まどかはいたくご機嫌だった。
それというのも、羽生くんが今日の試合に出場するとテレビが伝えたからだ。

「まどかのお祈りが効いたんだよ！きっと怪我も大したことないかも。」

そう言って、おかずのとんかつを口に放り込む。

「でも今後のために、休んでしっかり治した方がいいんじゃない？」

「お姉ちゃんは羽生くんが背負ってるものの大きさを知らないからー。大丈夫！責任感が人一倍強いの。」

「責任感ねぇ。」

私だったらそんな人生絶対に嫌だ。
プレッシャーはある意味重荷だし、出来れば誰にも期待されることなく生きたい。

「あ、フリーの時間だ。ご馳走さまー。」

慌ただしい…。ちゃんと噛んでるのかなと思いつつ、さっさとキッチンから出ていってしまった妹を呆れた眼差しで見送る。

だいたいここにも小さなテレビはあるのに、まどかは絶対にリビングの大きなテレビでしか見ない。
まるで自分の物かのように、毎回チャンネル権を主張するのだ。

「ご馳走さま。」

「あら、Aもリビングで羽生くん見るの？」

私も同じタイミングで食事を終えたものだから、お母さんが珍しそうに聞いてきた。

「うーん…やめとく。だってあんまり人が集まってる場面見たくないんだもん。」

「あら、そうだったわね。」

そして思い出したように口許を押さえる。

実は…。これは私と両親だけの秘密なのだけど、なぜか家族の中で私だけ、小さい頃から“視えざるもの”が視えるのだ。

しかも自分の意思とは関係なく、特に妖怪の類いに敏感に反応してしまう体質らしく、大人になるにつれて、平安時代の風景までもが鮮明に頭に飛び込んでくるようになってしまった。

俗に言う、五芒星や陰陽道。
お父さんは、神社に生まれたせいだろうって言うのだけど、私は昔、自分が安倍晴明の生まれ変わりなんじゃないかと本気で悩んだことがある。

まぁ今考えたら厨二病もいいところだけど、うちの神社も晴明にゆかりがあるって言ってたし、可能性はゼロじゃない…と思う。

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