【嘘じゃない】8 ★ ページ21
「それはとても強力な力をもった…」
「あのさ。」
あまりにも遠い話に、俺はため息をついて彼女の話をさえぎった。
「はい…。」
「妖怪とか取り憑くとか、そういう作り話はどうかと思うよ。」
やっぱここへ来たのは無駄足だったかなと思っていると、突然、作り話なんかじゃないです!と強い口調で反論される。
「そりゃいきなりこんな話信じてもらえないかも知れないけど、羽生さんは今、危機的状況に変わりないんです。」
危機的状況…?
何言ってんだよこいつ。
確かに白っぽい幻覚を見たことはあるけど、妖怪なんて誰が信じるか。
「嘘だ。」
「嘘じゃない。」
「じゃあ百歩譲ってさ、何で君にそんなことが分かんの。」
押し問答の末、問い詰めるように言い放ったら、さっきまでの勢いが少し弱まる。
やっぱはったりか?
じろりと睨んだら、もごもごしながら小声でこう言った。
「それは…私が視える人だからです。」
「…え?」
「だから、妖怪が視えるんですってば…。」
「…はぁ?」
「……。」
沈黙が流れる中、頭をフル回転させて今彼女が言ったことを反芻する。
俺に妖怪が取り憑いている→なぜわかる?→視えるから。
「……。」
こ、こいつ…まさか厨二病…。
どうしよ、これ以上このくだらない話に付き合うべきかちょう悩む!
「信じてください…。」
俺が答えられないでいると、ついにはうつむいてしまった。
仕方ない、情けをかける訳じゃないけど少し掘り下げてみるか。
「じゃあその妖怪は今どこにいんの。」
「羽生さんの中です…でも今はこの御神体のおかげで視えないです。」
「視えない?」
「というより出てこれません。」
……。
わかった、こいつ不思議ちゃんだな。
どうしよ…頭が痛い。
「つかさ、俺昨シーズン、安倍晴明のプログラムやったんだよね。」
「はい。」
「だから、晴明の魂が宿ってるとか言われるのならまだしも、妖怪が憑いてるとか信じられんないわけ。」
床を指でとんとんと叩きながら、言い聞かせるように話す。
全てを浄化させるような、渾身のSEIMEIを滑ったんだ。
あの魂のプログラムを、妖怪に取り憑かれた身体で滑れるものか。
「でも本当にいるんです。羽生さんだって、最近怪我が続くのはおかしいと思ってますよね。」
「え?」
「ロステレコム杯の練習の時、足を引っ張ったのは妖怪です。」
「……。」
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鹿(プロフ) - 雪菜さん» ありがとうございます!面白いと言っていただけて嬉しいです。怖い話は苦手です^^;今回は心霊とは違うのですが、和風っぽくしたいなと思ってます!^^ (2019年6月17日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
雪菜(プロフ) - おはようございます、新しい話も面白いです!私は昔から心霊とかそういった話が好きです。本当にあった怖い話という ものがあります。そのなかでも山本まゆりさんの恐怖進行刑(ショックリポート)です面白いので読んで見てください (2019年6月16日 9時) (レス) id: 67e9c24f43 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - 心菜さん» 毒ガスが噴き出ているところでしょうか^^調べているときに見たような。あまり九尾ネタが広がらなかったらごめんなさい!今回は短めのお話にしようかなーと、更新早めを目指してます! (2019年6月15日 18時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
心菜(プロフ) - 新作!ありがとうございます。栃木県の那須塩原市に殺傷石と言う所があって、九尾の狐伝説があります。宜しければご参考まで。また楽しみに読ませて頂きます。 (2019年6月14日 21時) (レス) id: 15da2c977a (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - みなみさん» 私も調べてみたら、晴明と繋がっていることがわかって、これなら書けるかなーと^^神事とかはもう適当でねつ造ばかりなので、突っ込まないでくださいね〜! (2019年6月14日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鹿 | 作成日時:2019年6月10日 16時