【わかるでしょ。】3 ☆ ページ40
「はぁ、落ち着く…。」
「トロントにいる間、怪我はなかった?」
「ちょっとはしたけど…軽いから平気。」
自らの頬や身体を擦り付けてくる羽生くんが、なんだか子供のように思えた。
「ちょっと上手くなってんじゃん。」
高速に乗るなり、羽生くんが伸びをしながら運転を誉めてくれる。
「そうかな。」
「うん。練習しとけって言ったの、実行したんだな。」
えらいえらい。と、わざとらしく拍手される。
「そうだ、ねぇ。あのお守り効いた?」
先月日本を発つ前に渡した、私の髪の毛の入ったお守り。
その場しのぎで作ったので、あの後、効力があったのか聞きたかったのだ。
すると、あぁ、ここにあるよ。とポケットをごそごそして、渡したまんまの綺麗なお守りが出てきた。
「この左と右で、斜めに赤と黒になってんのが格好いいよな。」
そう言って、目の前に掲げて見てくれる。
「うちの神社のイメージカラーなの。赤は生命の赤、黒は沈黙を表してるんだって。」
「ふーん。でも最初は効いてたんだけど、だんだん効力が弱くなってきたのかな。それなりに九尾が悪さした。」
口を尖らせて、羽生くんがぴんとお守りをはじく仕草をする。
「そっか。切った髪だから効きめは約1ヶ月ってとこね。今日また新しいの渡すから。」
「うん。頼むわ。」
最寄りのインターに近づいたので車線を変更したら、練習したおかげでわりとスムーズに運転出来ていてほっとする。
まぁこんな夜中に他に走る車なんてほとんどいないけど。
「でも、わざわざうちの神社に寄らなくてもよかったんじゃないの?」
別に式典が終わってからでも良かったらのでは?
「いいや。あの空間はまじで俺の精神安定剤だから。日本に帰ってきたら真っ先に行かなきゃだめな場所。」
「他の神社じゃだめなの?」
「だめ。なんかだめだった。」
なぜか断言される。
ふぅん…。そんな風に言ってくれて嬉しいなと思っていると、不意に羽生くんの腕時計のアラームが鳴った。
「あ、日付変わっちゃった。」
一瞬車のデジタル時計を見たら、午前0時になっていた。
「お参りしたらすぐ帰るよ。あ、そのあと実家まで運転頼むな。」
そんな中、ごく自然に次の行き先をお願いされる。
「言われなくてもさせて頂きますよ。」
本当に人使い荒いんだから。
それにしても、腕時計をちゃんと日本時間に戻してるなんて、マメな人だなと感心してしまった。
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鹿(プロフ) - 雪菜さん» ありがとうございます!面白いと言っていただけて嬉しいです。怖い話は苦手です^^;今回は心霊とは違うのですが、和風っぽくしたいなと思ってます!^^ (2019年6月17日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
雪菜(プロフ) - おはようございます、新しい話も面白いです!私は昔から心霊とかそういった話が好きです。本当にあった怖い話という ものがあります。そのなかでも山本まゆりさんの恐怖進行刑(ショックリポート)です面白いので読んで見てください (2019年6月16日 9時) (レス) id: 67e9c24f43 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - 心菜さん» 毒ガスが噴き出ているところでしょうか^^調べているときに見たような。あまり九尾ネタが広がらなかったらごめんなさい!今回は短めのお話にしようかなーと、更新早めを目指してます! (2019年6月15日 18時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
心菜(プロフ) - 新作!ありがとうございます。栃木県の那須塩原市に殺傷石と言う所があって、九尾の狐伝説があります。宜しければご参考まで。また楽しみに読ませて頂きます。 (2019年6月14日 21時) (レス) id: 15da2c977a (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - みなみさん» 私も調べてみたら、晴明と繋がっていることがわかって、これなら書けるかなーと^^神事とかはもう適当でねつ造ばかりなので、突っ込まないでくださいね〜! (2019年6月14日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鹿 | 作成日時:2019年6月10日 16時