【雨】7 ☆ ページ37
「それが出来たら苦労しないよ。」
「イメージとしては、限界まで引きつけて、内側からこう、びゅわっと解放する感じを…。」
お父さんが両手を広げたジェスチャーでイメージを伝えてくれるのだけど、ふざけてるようにしか見えなくて若干いらっとする。
「真面目に考えてるの?」
「考えてるよ。そこをAが羽生くんごとぐっと捕まえて…。」
「どんな風に?」
「こう、ぎゅっと…。」
自分で自分を強く抱きしめるような素振りに、これはハタから見たら完全に変な人だなと思う。
おまけに足まで絡めるようにして、はしたないったらない。
「なにそれ…。」
「ここでAが羽生くんの上に乗っかって、身体を揺するように九尾の魂をしぼりとってやれ!」
ついにはクッションを羽生くんに見立てて、馬乗りになった。
すると突然リビングのドアが開く気配がして、二人共に視線を扉に向ける。
「やだ、お父さん!娘に何見せてるの?!」
「「へ???」」
そこにはお母さんが立っていて、さも今クッションと戯れているお父さんを怒鳴り付けた。
そしてづかづかと部屋を進み、クッションを素早く取り上げて、そのままお父さんの頭に容赦のないクリティカルヒットをお見舞いする。
「痛っ!」
「年頃の娘にそういう行動を見せるんじゃない!」
えっ??
「お、お母さん…、誤解だよ…。」
「うるさい!」
うずくまるお父さんに、もう一撃クッションが…。
ていうか、今の動きって…。
「はっ!!」
私は頬に手をあてて、ムンクの叫びのように口を開ける。
も、もしやお母さん…。今のを男女のアレに見間違えたのでは…。
いやいや、お父さんの言うとおり、それは全くの誤解だ。
たまたまそんな風に見えてしまっただけで、いくらなんでもあり得ない事だし、こんな方法で九尾を退治できるはずがない。
私は頭を横に振って、そのおぞましい想像をかき消す。
「Aは神職に仕える身なのよ!それを貴様は!」
「やめろ!違うんだ、これは九尾を…。」
「言い訳するな!」
や、やばい。夫婦喧嘩が始まってしまった…。
こうなったら誰もお母さんを止められないので、もうここからとっとと退散だ。
「あぁ!A、行かないでくれ〜。」
「お父さんごめんね、ありがとう!」
何がありがとうなのかは微妙だけど、少し一人になりたかったので、真っ直ぐ階段を上って自室へと向かった。
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鹿(プロフ) - 雪菜さん» ありがとうございます!面白いと言っていただけて嬉しいです。怖い話は苦手です^^;今回は心霊とは違うのですが、和風っぽくしたいなと思ってます!^^ (2019年6月17日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
雪菜(プロフ) - おはようございます、新しい話も面白いです!私は昔から心霊とかそういった話が好きです。本当にあった怖い話という ものがあります。そのなかでも山本まゆりさんの恐怖進行刑(ショックリポート)です面白いので読んで見てください (2019年6月16日 9時) (レス) id: 67e9c24f43 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - 心菜さん» 毒ガスが噴き出ているところでしょうか^^調べているときに見たような。あまり九尾ネタが広がらなかったらごめんなさい!今回は短めのお話にしようかなーと、更新早めを目指してます! (2019年6月15日 18時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
心菜(プロフ) - 新作!ありがとうございます。栃木県の那須塩原市に殺傷石と言う所があって、九尾の狐伝説があります。宜しければご参考まで。また楽しみに読ませて頂きます。 (2019年6月14日 21時) (レス) id: 15da2c977a (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - みなみさん» 私も調べてみたら、晴明と繋がっていることがわかって、これなら書けるかなーと^^神事とかはもう適当でねつ造ばかりなので、突っ込まないでくださいね〜! (2019年6月14日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鹿 | 作成日時:2019年6月10日 16時