【未来へ】5 ☆ ページ42
「翔くんずっとご機嫌だね。きっと人前に出るのが好きなタイプなんだ。ゆづに似てる。」
ふと佳菜子さまが、含み笑いをしながら言った言葉に、いつか博物館で見た子供の頃のゆづ王子が重なる。
あんな風に。翔くんも一生懸命な子に育ってくれたらいいな。
そうすればきっと、人を動かせる人間になれるだろう。
そんなことを感慨深く想っていたら、不意にバルコニーへの扉が開かれて、ひやっとした空気が頬を刺した。
これからいよいよお披露目のようだ。
「A、行こう。」
先を行くゆづ王子に促され、後に続くように私もバルコニーへ出る。
すると私たちの姿が見えるや否や、下の広場にいる国民が一斉に沸いた。
すごい…。
眼下に見えるとてつもない人数を前に、怖じ気づきそうになるけど、もう私は以前の弱い私ではない。
背筋を正し、身も心も氷の国の王族だという強い志のもと、笑顔で堂々と手を振る。
「わー、皆寒いのにこんなに来てくれたんだー!」
そして佳菜子さまもまた、嬉しそうにとびきりの笑顔で手を振って。
正室と側室。その立場は天と地ほど違うけど、勝つとか負けるとか、そんな関係にならなくて本当に良かったなと、心から思う。
こんなに安心して日々を過ごせるのは、正室である佳菜子さまの懐の深さがあるからだ。
夫婦の形はそれぞれ違う。でもそれを証明してくれたお二人に、今は感謝してもしきれない。
「翔。ここにいる人たちは、お前が生涯、命をかけて守るべき人だよ。」
そんな中、ゆづ王子が優しく、そして強い眼差しで翔くんに告げた。
自分たちのために集まってくれた人々へと、小さな身体をちゃんと見えるように向けて。
その行動は、ゆづ王子もまた翔くんに、頑張れ。とエールを送っているようにも感じる。
…この光景を、一生忘れないでいよう。
大好きなゆづ王子と一緒に、国や家族のために、自分が出来ることをしよう。
遠い未来に国を継ぐ我が子へ、確かなバトンを渡せる日が来るまで。
終わり
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鹿(プロフ) - yuccoちゃんさん» 出産シーンはあまりリアルになり過ぎず、気を付けたのですが^^;羽生さんなら立ち合いそうじゃないですか?いつか本人も、親になってほしいです^^ (2019年6月24日 17時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - りんりさん» ありがとうございました!何度でも読んでください^^私も読みます!とっても長いので、時間のあるときにでも。いつでもお気軽にコメント書いてくださいね!妄想を受け止めてくださり、ありがとうございました! (2019年6月24日 17時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
yuccoちゃん(プロフ) - 完結おめでとうございます!とても楽しく読ませていただきましたー!やっぱりゆづは王子だよね!(´ー`*)次の作品も楽しみにしています。出産シーンのゆづが駆けつけて来た時の表現にキュンキュンしました!(*´ `) (2019年6月23日 22時) (レス) id: f1f31ef53f (このIDを非表示/違反報告)
りんり(プロフ) - 初めまして。氷の国、ずっと楽しく読ませていただいていました。完結、おめでとうございます^^私ごとながら先日、FOIにて初めて結弦王子を生で見て、もう一度この小説を最初から読みたい気持ちに駆られています。次作も楽しみに読ませていただきますね! (2019年6月23日 17時) (レス) id: 6a04cdba45 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - 心菜さん» やっぱりその時その時に羽生さんを投影させていると、楽しいです^^あれもこれもまだ書いてないエピソードもありますが、ちょっと気分転換もいいかなと、ちょっと強引に終わりましたが^^;また何か書ければいいなと思います! (2019年6月13日 17時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鹿 | 作成日時:2019年5月25日 9時