検索窓
今日:5 hit、昨日:4 hit、合計:58,608 hit

【未来へ】3 ★ ページ40

「今日は午後から、バルコニーで翔くんのお披露目があるんですよね。」

不意にAがこの後の予定に触れる。

「そうなの。大変だと思うけど、佳菜と俺たちとの四人で国民の前に出るから、とびきりの笑顔で宜しくね。」

以前記者さんとのインタビューで伝えたお披露目会。
国民の皆に翔を見せたくて大臣に打診したら、ほんの少しの時間ならと許可してもらったのはいいものの…。

「寒いので、おくるみをたくさん使いましょうね。」

ふぅふぅとハーブティーを冷ましながらAが言うのだけど、この季節にお披露目は早まったかなと、今さらながら反省しているのだ。

「春になってからにすればよかったかな。」

「それだとかなり成長してしまいますよ。この寒さに耐えてこそ、立派なスケート選手になれるというものです。」

なぜかそうきっぱり言われて、A強ぇなと思いつつ、何気ない会話の範囲で尋ねる。

「ねぇ、この子は将来国王になるけど、スケートと両方できるかな。」

国政とスケート。二足のわらじはとても大変だ。
どうやったって練習時間は人より少なくなるし、国政を疎かにすれば、たちまち政権のバランスが崩れてしまう。

「大丈夫です。ゆづさんの遺伝子を受け継いでいるので、負けず嫌いに違いありませんから。」

「言うねー。」

「言わせていただきます。」

負けず嫌い。
実はこれは、とても大事なこと。

スケートだけでなくて、生きていく上で勝利を導くための、ただ一つの道かもしれないから。

生まれたときから人の上に立つことを余儀なくされた翔が、果たしてどんな王子になるか。それは誰にも分からないけど、出来る限りの経験でカバーさせてあげたいと思っている。

「でも、せめて子供のうちは好きなことさせてあげたいかなー。」

「そうですね。」

自分がそうだったように。
この氷の国で、たくさん楽しいことを教えてあげたい。

この子の人生が、実り有るものになるように。
栄光、挫折、そして真実の愛。色んな事を経験した自分だからこそ、伝えられることがある。

今、俺の心は、家族と共に未来へと向かっていた。





.

【未来へ】4 ☆→←【未来へ】2 ★



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (92 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
118人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

鹿(プロフ) - yuccoちゃんさん» 出産シーンはあまりリアルになり過ぎず、気を付けたのですが^^;羽生さんなら立ち合いそうじゃないですか?いつか本人も、親になってほしいです^^ (2019年6月24日 17時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - りんりさん» ありがとうございました!何度でも読んでください^^私も読みます!とっても長いので、時間のあるときにでも。いつでもお気軽にコメント書いてくださいね!妄想を受け止めてくださり、ありがとうございました! (2019年6月24日 17時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
yuccoちゃん(プロフ) - 完結おめでとうございます!とても楽しく読ませていただきましたー!やっぱりゆづは王子だよね!(´ー`*)次の作品も楽しみにしています。出産シーンのゆづが駆けつけて来た時の表現にキュンキュンしました!(*´ `) (2019年6月23日 22時) (レス) id: f1f31ef53f (このIDを非表示/違反報告)
りんり(プロフ) - 初めまして。氷の国、ずっと楽しく読ませていただいていました。完結、おめでとうございます^^私ごとながら先日、FOIにて初めて結弦王子を生で見て、もう一度この小説を最初から読みたい気持ちに駆られています。次作も楽しみに読ませていただきますね! (2019年6月23日 17時) (レス) id: 6a04cdba45 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - 心菜さん» やっぱりその時その時に羽生さんを投影させていると、楽しいです^^あれもこれもまだ書いてないエピソードもありますが、ちょっと気分転換もいいかなと、ちょっと強引に終わりましたが^^;また何か書ければいいなと思います! (2019年6月13日 17時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:鹿 | 作成日時:2019年5月25日 9時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。