【未来へ】3 ★ ページ40
「今日は午後から、バルコニーで翔くんのお披露目があるんですよね。」
不意にAがこの後の予定に触れる。
「そうなの。大変だと思うけど、佳菜と俺たちとの四人で国民の前に出るから、とびきりの笑顔で宜しくね。」
以前記者さんとのインタビューで伝えたお披露目会。
国民の皆に翔を見せたくて大臣に打診したら、ほんの少しの時間ならと許可してもらったのはいいものの…。
「寒いので、おくるみをたくさん使いましょうね。」
ふぅふぅとハーブティーを冷ましながらAが言うのだけど、この季節にお披露目は早まったかなと、今さらながら反省しているのだ。
「春になってからにすればよかったかな。」
「それだとかなり成長してしまいますよ。この寒さに耐えてこそ、立派なスケート選手になれるというものです。」
なぜかそうきっぱり言われて、A強ぇなと思いつつ、何気ない会話の範囲で尋ねる。
「ねぇ、この子は将来国王になるけど、スケートと両方できるかな。」
国政とスケート。二足のわらじはとても大変だ。
どうやったって練習時間は人より少なくなるし、国政を疎かにすれば、たちまち政権のバランスが崩れてしまう。
「大丈夫です。ゆづさんの遺伝子を受け継いでいるので、負けず嫌いに違いありませんから。」
「言うねー。」
「言わせていただきます。」
負けず嫌い。
実はこれは、とても大事なこと。
スケートだけでなくて、生きていく上で勝利を導くための、ただ一つの道かもしれないから。
生まれたときから人の上に立つことを余儀なくされた翔が、果たしてどんな王子になるか。それは誰にも分からないけど、出来る限りの経験でカバーさせてあげたいと思っている。
「でも、せめて子供のうちは好きなことさせてあげたいかなー。」
「そうですね。」
自分がそうだったように。
この氷の国で、たくさん楽しいことを教えてあげたい。
この子の人生が、実り有るものになるように。
栄光、挫折、そして真実の愛。色んな事を経験した自分だからこそ、伝えられることがある。
今、俺の心は、家族と共に未来へと向かっていた。
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鹿(プロフ) - yuccoちゃんさん» 出産シーンはあまりリアルになり過ぎず、気を付けたのですが^^;羽生さんなら立ち合いそうじゃないですか?いつか本人も、親になってほしいです^^ (2019年6月24日 17時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - りんりさん» ありがとうございました!何度でも読んでください^^私も読みます!とっても長いので、時間のあるときにでも。いつでもお気軽にコメント書いてくださいね!妄想を受け止めてくださり、ありがとうございました! (2019年6月24日 17時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
yuccoちゃん(プロフ) - 完結おめでとうございます!とても楽しく読ませていただきましたー!やっぱりゆづは王子だよね!(´ー`*)次の作品も楽しみにしています。出産シーンのゆづが駆けつけて来た時の表現にキュンキュンしました!(*´ `) (2019年6月23日 22時) (レス) id: f1f31ef53f (このIDを非表示/違反報告)
りんり(プロフ) - 初めまして。氷の国、ずっと楽しく読ませていただいていました。完結、おめでとうございます^^私ごとながら先日、FOIにて初めて結弦王子を生で見て、もう一度この小説を最初から読みたい気持ちに駆られています。次作も楽しみに読ませていただきますね! (2019年6月23日 17時) (レス) id: 6a04cdba45 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - 心菜さん» やっぱりその時その時に羽生さんを投影させていると、楽しいです^^あれもこれもまだ書いてないエピソードもありますが、ちょっと気分転換もいいかなと、ちょっと強引に終わりましたが^^;また何か書ければいいなと思います! (2019年6月13日 17時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鹿 | 作成日時:2019年5月25日 9時