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【未来へ】1 ★ ページ38

★ゆづサイド

翔が生まれて1ヶ月。氷の神殿での生誕の儀も昨日無事終了し、ようやくAたちが本来の部屋に戻って来てくれた。

子供を生んだ後は、ゆっくり体力を回復させなければならないので、今日までずっと特別室で過ごしていたのだ。

「懐かしいにおいがします…。」

もうすっかり元通りのぺったんこのお腹になったAが、翔を抱っこして入ってくるなり呟く。

「でもちょっぴり模様替えして新しくなった場所もあるよ。翔の産着やベッド置いたりしてさ。」

俺たち夫婦の希望で、出来るだけ自分たちで子育てしようと、夜中以外はここで過ごせるようにしてもらった。

一般家庭に比べて色々制約はあるけど、なるべく普通に育てたいなと思ったのだ。

「では王子さま方、私は隣の部屋におりますので、ご用の際はなんなりとお申し付けください。」

「あ、うん。ありがと。」

礼をして付き添いの乳母が去ってゆく。
そうして扉が閉まり、ようやく訪れるプライベートな空間に、ほっと心が落ち着く。

「王子さま。」

「ん?」

すると不意にAが改まって、普段とは違う呼び方をしたので何事かと思って振り向くと…。

「ただいま、戻りました。」

翔を抱いたまま一度深々とお辞儀をした。
それはまるで、自分の居場所はここなんだと俺に伝えているようでもあり、無事に大仕事を終えた充実感を、共有しようとしているようでもあり。

「おかえり。待ってたよ。」

そんな妻へ、自分も改めてそう告げると、にこっと笑ったAの背中に手を回して、さらに部屋の奥へと促す。

短い距離とはいえ、こうやって一緒に歩くのも久しぶりだな。
でもまずは翔を寝かせてあげようと、リビングに置いたベビーベッドに先回りして掛け布団をめくる。

「ありがとうございます。…翔くん、おうちへ帰ってきたよ。」

「うちなの?ここ。」

「おうちです。」

Aがそーっと翔をベッドに置く。
ただ部屋から部屋へ移動しただけだけど、A的には一軒家のようなくくりにしているのが面白い。

「ふふ。何見てるのかな。」

真新しい寝具に寝かされた翔は、一応起きてはいるものの、きょとんとした表情で目をぱちぱちしているようだ。
それを二人でのぞき込みながら、幸せを噛みしめて…。

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鹿(プロフ) - yuccoちゃんさん» 出産シーンはあまりリアルになり過ぎず、気を付けたのですが^^;羽生さんなら立ち合いそうじゃないですか?いつか本人も、親になってほしいです^^ (2019年6月24日 17時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - りんりさん» ありがとうございました!何度でも読んでください^^私も読みます!とっても長いので、時間のあるときにでも。いつでもお気軽にコメント書いてくださいね!妄想を受け止めてくださり、ありがとうございました! (2019年6月24日 17時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
yuccoちゃん(プロフ) - 完結おめでとうございます!とても楽しく読ませていただきましたー!やっぱりゆづは王子だよね!(´ー`*)次の作品も楽しみにしています。出産シーンのゆづが駆けつけて来た時の表現にキュンキュンしました!(*´ `) (2019年6月23日 22時) (レス) id: f1f31ef53f (このIDを非表示/違反報告)
りんり(プロフ) - 初めまして。氷の国、ずっと楽しく読ませていただいていました。完結、おめでとうございます^^私ごとながら先日、FOIにて初めて結弦王子を生で見て、もう一度この小説を最初から読みたい気持ちに駆られています。次作も楽しみに読ませていただきますね! (2019年6月23日 17時) (レス) id: 6a04cdba45 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - 心菜さん» やっぱりその時その時に羽生さんを投影させていると、楽しいです^^あれもこれもまだ書いてないエピソードもありますが、ちょっと気分転換もいいかなと、ちょっと強引に終わりましたが^^;また何か書ければいいなと思います! (2019年6月13日 17時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鹿 | 作成日時:2019年5月25日 9時

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