【SEIMEI】6 ★ ページ15
「男の子だ…。」
「ゆづ、やったじゃん!」
はしゃぐ佳菜に背中をばしっと叩かれる。
でも今日は全然痛くない。むしろもっと強く叩いて、夢じゃないことを証明して欲しいくらいだ。
「花火はどーんと1発だよー!」
しーちゃんが廊下で待機している次官に打ち上げる花火の数を告げると、廊下がざわついて、元気な返事と共に、勢い良く走り去る音がする。
これで国民も皇子の誕生を知ることになるだろう。
「A、起きてる…。」
「…ゆ、づさん。」
声をかけたらゆっくりだけど目を開けてくれた。
「A、よく頑張ったね。大義だった…。」
「…はい。」
「愛してるよ…世界で一番幸せな贈り物を、ありがとう。」
手を握ったまま、お互いが泣きそうになるのをこらえながら見つめ合う。
すると、にこっと笑ってくれたAの横顔を、大きな音で鳴った一発の花火が照らしたのだった。
「かわいい…。」
日付が変わって深夜。
医務室から出て、Aと皇子のために特別に用意された部屋で、まだ二人から離れたくない俺と佳菜は、産湯に入れられている皇子を食い入るように見ていた。
「Aに似てるけど、泣いたらゆづだよね。」
「そっか?」
「うん。負けて悔し泣きしてるちっちゃい頃のゆづそっくり。」
「……。」
そっちか。
つか嫌味を言っても許されるキャラってある意味得だな。
「さぁ、綺麗になったね〜。ママの所へ行こうね。」
しーちゃんが皇子をおくるみに包んで、ふかふかのベッドまで運んでくれる。
まだまだAは起き上がれないけど、目は冴えているようで、待ちかねたように我が子を笑顔で迎える。
そのままそっと並んで寝かせると、Aがこの上なく幸せそうに、皇子へと顔を近づけた。
「いいにおい…。」
頬っぺたに鼻をくっつけて、存在を確かめるように触れる。
生まれたときの大泣きっぷりはどこへやら。今はすやすや眠っているようだ。
「ゆづ、抱っこする?」
ふとしーちゃんが俺を振り返って告げる。
そういえば以前、Aが一番に抱っこして欲しいって言ってたな。
いいのかな、とAに視線を向けてみると…。
「ゆづさん、お願いします。」
きっぱりとそう言ってくれたので、椅子に腰かけてから、慎重に皇子の背に手を差し入れ、ゆっくり持ち上げてみる。
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鹿(プロフ) - yuccoちゃんさん» 出産シーンはあまりリアルになり過ぎず、気を付けたのですが^^;羽生さんなら立ち合いそうじゃないですか?いつか本人も、親になってほしいです^^ (2019年6月24日 17時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - りんりさん» ありがとうございました!何度でも読んでください^^私も読みます!とっても長いので、時間のあるときにでも。いつでもお気軽にコメント書いてくださいね!妄想を受け止めてくださり、ありがとうございました! (2019年6月24日 17時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
yuccoちゃん(プロフ) - 完結おめでとうございます!とても楽しく読ませていただきましたー!やっぱりゆづは王子だよね!(´ー`*)次の作品も楽しみにしています。出産シーンのゆづが駆けつけて来た時の表現にキュンキュンしました!(*´ `) (2019年6月23日 22時) (レス) id: f1f31ef53f (このIDを非表示/違反報告)
りんり(プロフ) - 初めまして。氷の国、ずっと楽しく読ませていただいていました。完結、おめでとうございます^^私ごとながら先日、FOIにて初めて結弦王子を生で見て、もう一度この小説を最初から読みたい気持ちに駆られています。次作も楽しみに読ませていただきますね! (2019年6月23日 17時) (レス) id: 6a04cdba45 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - 心菜さん» やっぱりその時その時に羽生さんを投影させていると、楽しいです^^あれもこれもまだ書いてないエピソードもありますが、ちょっと気分転換もいいかなと、ちょっと強引に終わりましたが^^;また何か書ければいいなと思います! (2019年6月13日 17時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鹿 | 作成日時:2019年5月25日 9時