【歓声】5 ★ ページ44
前選手の曲が終わる寸前に仕切りのカーテンをくぐると、先にハビのコーチとして付いていたブライアンが、小走りに俺の側まで来てくれる。
ハビがキスアンドクライで一人で点数を聞く間にプーをブライアンに手渡し、エッジカバーを外してリンクに入ると、とたんに自分の名前や顔の描かれたバナーが視界一杯に広がる。
いつも応援ありがとう…という気持ちでそれらをぐるっと見渡しつつ、ウォームアップをしながらいつものように３ループを跳んだら、次はすぐにアクセルを跳ぶ。
そんな中、否が応にもハビの点数と、わぁ！という歓声が耳に入るのだが…。
さすがだわ。予想通り３００点を越えてきた…。
でもこれでさらに心の炎に薪がくべられた。
好き勝手暴れまわる炎になってゆく自分の闘争心をどこまでコントロールできるか。
「冷静に、落ち着こう。」
一度ブライアンの元まで戻ったら、彼がまるで自分がこれから滑るかのように深呼吸をした。
「落ち着いてる…。」
飲み物を飲んでフェンスに置かれたプーの頭をぐしゃりと掴む。
お前なら分かるよな、俺の気持ち。
身体の中が今スケートで一杯で、爆発しそうなのを。
ぺろっと渇いた唇を舌で撫でて、フェンスに手をつき屈む。
ばんと一回叩いたら、名前がコールされて広いリンクへ飛び出した。
「ゆづがんばー！！」
国民からのたくさんの応援に、この王者の衣装を見せつけるかのごとく、真っ黒な羽と両手を広げて挨拶をしながら、もう何度も味わった快感に打ち震える自分を冷静に受け止めて。
胸の前で手を合わせて、ブレードの止まるシュッとした音が鳴ると、会場が揺れるほどの歓声が一瞬で静かになった。
羽ばたく前のような格好で氷上に屈み、そして吹雪の中、何かが解き放たれるかのような音が響き始めると、徐々に自分の中の阿修羅が目覚めてゆく。
その始まりと共に心臓の鼓動を突き動かされる身体。
そして滑り出して３０秒もしないうちに跳ぶのは、クワドアクセルだ。
短い助走で速度や飛距離など、全てを計算しながら、強い気持ちを銅鑼の音に合わせて跳ぶ。
「……！！！」
ぎゅっと身体を絞めて、遠心力に持っていかれないように。
この２秒にもみたない滞空時間に自分の持てる力を全部込めた。
着氷と共に、わぁ！っと言う地鳴りのような歓声が耳に届いたら、もう次のエレメンツに切り替える。
つかアクセル跳べたらもういけるわ。
俺は幾つかのターンを入れながら、クワドサルコーの起動へと入った。
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鹿(プロフ) - みなみさん» みなさんの、早く次をっていうオーラがすごくて、恐縮です＾＾；こうやって一生書いてそうですが、本人の結婚までかなあ〜。一気にモチベーション下がりそうですし、妄想できないような気もしますね。いよいよ明日から幕張！ニュース楽しみ！！ (2019年5月23日 16時) (
レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
みなみ - 追伸。クワドアクセル、GOE+5、見たいなあ。 (2019年5月22日 23時) (レス) id: 42f93678ff (このIDを非表示/違反報告)
みなみ - いよいよ皇子が生まれるんですね。現実から離れた設定のお話し、とても楽しかったです。なんて、終わりが見えてきたって、寂しいですが、早くも次の作品を楽しみに待ってますね。 (2019年5月22日 23時) (レス) id: 42f93678ff (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - 雪菜さん» どうやらお帰りになった模様＾＾幕張楽しんでくださいね！お話も頑張ります〜。感想うれしいです＾＾ (2019年5月22日 17時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
雪菜(プロフ) - ありがとうございます！参考させていただきます。あとちょっとで始まります。楽しみです。小説の方も主人公ちゃんの陣痛が始まり産まれますね早く続きが読みたくなります！(^o^) (2019年5月22日 0時) (レス) id: 67e9c24f43 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鹿
| 作成日時：2019年4月26日 20時
