【会いたくて】5 ★ ページ29
★ゆづサイド
会場入りする直前に、衣装を受け取るためにジョニーの作業部屋へ寄る。
最後の最後に、衣装がずれないように中指に引っ掻ける部分のゴムを微調整してもらっていたのだ。
「ごめんね、ぎりぎりまで。」
「いいよ。不具合は直接演技の質に繋がるから、直せる部分は直さなきゃ。」
あまり時間もない中、仕上がりを確認してトルソーから脱がせてきれいにたたんでくれる。
「これでよし、と。フリーも楽しみだけど、ユヅルたちの赤ちゃんもいよいよだね。」
そしてよほど楽しみなのか、ジョニーはいつも皇子のことを気にかけてくれるのだ。
「そうなの。なんかさ、親になることがパワーの源って感じで、すごい力が湧いてくる。」
これは本当にそうで、いつもなら試合前はスケートのことしか考えられないのだけど、今回は気持ちの上で、プレッシャーよりも責任感というか、外的要因によって押し上げられている感じがする。
自分が頑張る訳じゃないのに、とても大きな力をもらえる。そんな不思議なニュアンスで、自分が人として成長できるきっかけになっているように思う。
「ご褒美みたいな?」
「そう。すっごく欲しいプレゼントが貰える感じ。」
例えば嬉しい言葉なんかは形のないものだけど、形のあるものでこんなにも嬉しいものなど、今まで無かったんじゃないかな。
言葉以上に心のこもった贈り物を、大好きな人が授けてくれるんだ。
こんなに尊くて幸せな経験が出来ることに、感謝しかない。
「ユヅルは本当に頑張ってるものね。王子もスケートも、片手間に出来ることじゃないよ。」
「忙しすぎてAに寂しい思いをさせてる自覚はあるけどね。」
同じ部屋に暮らしてても、スケートのシーズンは結構すれ違いが多い。
朝早く出掛けて夜遅くに帰ってくる生活だから、今朝も言葉を交わしていない。
でもそれも今日までだ。
明日からはまたいつもの生活に戻れる。
「Aちゃんは良い子だよ。健気で一生懸命で。ユヅルのことを一番に考えてる。」
「妻であり俺のファンでもあるからね。」
「あはは!ファンね、ぴったりかも。」
今頃くしゃみしてるかも知れないなと思いつつ、ジョニーから衣装を受け取る。
「ありがとね!今夜の試合見に来てね!」
「勿論!昨日みたいな失敗はなしでお願いするよ。」
「やだも〜、えぐらないで。」
前屈みになりながら大袈裟に胸を押さえて、逃げるように衣装部屋を後にした。
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鹿(プロフ) - みなみさん» みなさんの、早く次をっていうオーラがすごくて、恐縮です^^;こうやって一生書いてそうですが、本人の結婚までかなあ〜。一気にモチベーション下がりそうですし、妄想できないような気もしますね。いよいよ明日から幕張!ニュース楽しみ!! (2019年5月23日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
みなみ - 追伸。クワドアクセル、GOE+5、見たいなあ。 (2019年5月22日 23時) (レス) id: 42f93678ff (このIDを非表示/違反報告)
みなみ - いよいよ皇子が生まれるんですね。現実から離れた設定のお話し、とても楽しかったです。なんて、終わりが見えてきたって、寂しいですが、早くも次の作品を楽しみに待ってますね。 (2019年5月22日 23時) (レス) id: 42f93678ff (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - 雪菜さん» どうやらお帰りになった模様^^幕張楽しんでくださいね!お話も頑張ります〜。感想うれしいです^^ (2019年5月22日 17時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
雪菜(プロフ) - ありがとうございます!参考させていただきます。あとちょっとで始まります。楽しみです。小説の方も主人公ちゃんの陣痛が始まり産まれますね早く続きが読みたくなります!(^o^) (2019年5月22日 0時) (レス) id: 67e9c24f43 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鹿 | 作成日時:2019年4月26日 20時