【会いたくて】1 ★ ページ25
★ゆづサイド
ショート後、取材と少しの仕事を終え、部屋に戻る。
Aはきっと寝てるだろうから、一人シャワーして寝る支度を整え薄暗い室内をそろりと進み、ほんの数歩でたどり着くベッドにゆっくり手をつくと、Aがいる場所がこんもりと盛り上がっている。
暗くて表情は分からないけど、おそらく今頃夢の中だろうな。
話が出来なくてちょっと残念に思いながらも、自分も休むつもりで身体を滑り込ませようと、慎重に毛布をめくってゆくと…。
「お帰りなさい。」
え…。
突然Aのはっきりした声がきこえて、びくっとなる。
うるさくしたつもりはなかったけど、ベッドを揺らしすぎただろうか。
「…起こしちゃった?」
「いいえ、起きてました。」
そう言って上半身を起こす。
「起きてたって…もう夜中だよ?」
「と言うより、興奮して眠れなくて…。」
暗いけど、苦笑いしているのが手に取るように分かる口調だ。
でも今のAにはゆっくり休んで欲しいのが本音。もう一人の身体じゃないのだから。
「だめでしょ、ちゃんと寝なきゃ。…赤ちゃんは?」
「特に変わりないので大丈夫です。それより今日はお疲れさまでした。ショート一位おめでとうございます。」
ぺこっと頭を下げて労いの言葉をくれる。
それだけで、Aの存在をとても大きく感じるから不思議だ。
「ありがと。でもアクセルがさぁ〜…。」
しかし冗談っぽく返してしまうのは照れ臭いから。
「それはまた明日、リベンジですね。」
「着氷が乱れてなきゃ、116点はいけたのに。」
「それでも一位は充分に素晴らしいです。」
「…そうだよね。」
悔しい気持ちも勿論あるけど、それらを全部ひっくるめて受け止めなきゃなんないから、こうして消化する時間はとても大切だ。
明日また、挑戦者になった気持ちで頑張ろう。
Aの隣にもぐり込んで、向かい合わせに横になる。
顔が近付くと、なんとなくだけどようやく表情が見えて、またほっとする。
「…ねぇA、俺たちの赤ちゃん、いつ生まれると思う?」
来週かな〜、それとも再来週かな?と、ちょっとスケートのことは置いておいて、ここにいる新しい命を想像しつつお腹を撫でる。
「明日でないことだけを祈ります。」
「わかんないよ?俺の子だから、ちょーわがままなタイミングで生まれてくるかも。」
「ふふ。」
信じてないのか、冗談ぽく笑うA。
そんな妻の身を案じるように、おやすみと頬にキスをした。
.
83人がお気に入り
「ファンタジー」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鹿(プロフ) - みなみさん» みなさんの、早く次をっていうオーラがすごくて、恐縮です^^;こうやって一生書いてそうですが、本人の結婚までかなあ〜。一気にモチベーション下がりそうですし、妄想できないような気もしますね。いよいよ明日から幕張!ニュース楽しみ!! (2019年5月23日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
みなみ - 追伸。クワドアクセル、GOE+5、見たいなあ。 (2019年5月22日 23時) (レス) id: 42f93678ff (このIDを非表示/違反報告)
みなみ - いよいよ皇子が生まれるんですね。現実から離れた設定のお話し、とても楽しかったです。なんて、終わりが見えてきたって、寂しいですが、早くも次の作品を楽しみに待ってますね。 (2019年5月22日 23時) (レス) id: 42f93678ff (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - 雪菜さん» どうやらお帰りになった模様^^幕張楽しんでくださいね!お話も頑張ります〜。感想うれしいです^^ (2019年5月22日 17時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
雪菜(プロフ) - ありがとうございます!参考させていただきます。あとちょっとで始まります。楽しみです。小説の方も主人公ちゃんの陣痛が始まり産まれますね早く続きが読みたくなります!(^o^) (2019年5月22日 0時) (レス) id: 67e9c24f43 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:鹿 | 作成日時:2019年4月26日 20時