氷の国21

【３０分】4　☆ ページ34

「フェイなら眠りの国へ行ったことあるし、誰にも見つからずに昌磨と接触できるでしょ。」

「そりゃ出来るけど…。」

何が起こってるの？と当然の質問が出たので、ゆづ王子がまたまた早口で教えてくれた。

それによると、手紙に書かれたメッセージに助けを乞う内容が書かれていたらしく、でもまだ何も分からない中で、フェイさんに様子を見に行ってもらおう、ということになったらしい。

“間抜けな王子だな…”

「ニジンスキーは黙ってて。あ、なんなら一緒に行って？お前小さいし言葉が話せるから役に立つ。」

“なぜ僕が…！”

「俺のしもべじゃん。」

“……”

普段あまりしもべについては言及しないのに、今日はゆづ王子がいつもと違って本当のご主人さまのようだ。
きっとそれほどまでに昌磨さまを心配しているのだろう。

「じゃあすぐに出発した方がいいね。」

「うん。指示は道中テレパシーでするから、今はとにかく急いで向かって欲しい。」

時間のロスがないように、作戦会議は移動の最中に行うということのようだ。

「わかった。行こ、ニジンスキー。」

“……”

やれやれといった感じでニジンスキーさんが立ち上がると、フェイさんも再びコウモリの姿に変身する。

そしてあっという間に、温室から飛び立ってしまった。

「気をつけてくださいねー！」

聞こえたかどうかはわからないけど、口元に両手をあてて叫んだら、ゆづ王子がくるっとターンして近くの椅子にどかっと腰かけた。

「……。」

これからテレパシーで交信するのだろう。真剣な表情で唇に指をあてている。

それにしても昌磨さまが軟禁とは…。
そんな大変なことになっていたなんて、他国のこととはいえ不安な気持ちがよぎる。

私はせめて、この緊迫した場にそぐわないゆづ王子の寝癖を直そうかなと思い、邪魔にならない範囲でそっと髪に触れた。





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